「まあ、ヘサームが君を大切にする気持ちもわからなくはないがな……」 「――っつ！」 　ナジさんに茶化されて顔が熱くなる。 　……やっぱりナジさんもヘサームの恋の相手がオレだってわかったみたいだ。 （そりゃそうか、なにせオレは面前でヘサームにキスされちゃったし？） 　……だけど。 （だけど本当にそうなのかな？） 　オレ、本当にヘサームに想われてるのかな。 　だってオレとヘサームは同性だ。 　それにオレはスラム街の出身。片やヘサームは王宮の兵士。 　身分違いも甚だしい。 　もし……もしも、ヘサームが恋をしている相手がオレじゃなかったら……。 （だとしたら、オレってかなりうぬぼれ屋のおめでたい勘違い野郎じゃないか！！） 　２日前のキスも、もしかしたら、意識が|朦朧《もうろう》としていただけで、相手を間違えたんじゃないかな。 　――他に好きな人がいる。 　そう思っただけで、胸が張り裂けそうだ。