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5.Seek~傷負い人
そんなオレの表情を覗き見たナジさんは、ややあって頷いた。
「なんだ……ちゃっかり両想いじゃないか。こいつ、お前さんには嫌われてると思って傷ついてやがるから、誤解は早めに解いてやってくれ」
「えっ?」
「おっと、野暮はやめよう。せいぜい尻に敷いてやれ」
オレの肩に手を置いたナジさんは腰を上げて部屋を出て行った。
後に残されたオレは、ひとり。
ヘサームの、短く波打つ黒髪を撫でる。
「……ヘサーム」
――ねぇ、ヘサーム。
本当なのかな。
バシラさんやナジさんが言うように、本当に、オレのこと、好きでいてくれてるの?
眠っているヘサームに、オレは祈るような気持ちで心の中で尋ねていた。
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