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6.Passion~アティファ
もう最悪。
涙、止まらない。
それくらい、ヘサームのことが好きになっていたなんて、自分でもビックリだ……。
「アティファ……」
ヘサームが手を伸ばしてくる。
でもきっとこれは同情。
オレを想ってくれてもいない相手に優しくされたって、ちっとも嬉しくない。
「触んなっ!」
パシンッ!
オレは差し出される手を払い除けた。
乾いた音が冷え切った心に響く……。
「いや、やだっ、オレのことを好きでもないクセに優しくなんてすんなっ!!」
――触らないで。
「父さんのジャンビーアも、取り戻さなきゃよかったんだ!!」
――好きな人じゃない相手に抱かれて悦んでいた穢らわしいオレを見ないで。
「そうしたら、オレはヘサームのこと、好きなんだって理解しなかったのにっ!!」
泣きべそをかきながら、みっともなく声を上げるオレ。
まるで、手に入らないオモチャを欲しがって駄々をこねている子供みたいだ。
しゃくりまで上げて――。
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