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8.Passion~アティファ

 ベッドに倒れ込む音がするのと同時に、オレの背中に柔らかい布の感触があった。  気がつけば、オレはまたヘサームの両腕に閉じ込められていた。  ――いや、違う。  さっきよりも、ずっと強い腕の力。  現状を把握したオレは、頭のてっぺんから血の気が引いていく……。  だって、だってヘサームは怪我をしているんだ。  そんなに強くのし掛かっちゃダメだ。  せっかくナジさんに止血してもらったのに、悪化したら大変だ。 (ヘサームが死んじゃう!!) 「やっ、ダメ、はなしてっ!! せっかく出血が止まったのに、傷が開くっ!!」 「放せば、アティファは俺の前からいなくなるだろう? だったら、放さない!!」 「ヘサーム?」 (――いったいなにを言っているの?) 「どんなに過酷な状況であっても、スレていない君を守ってあげたいと思ったのがはじめだ。話しをしていると、表情がクルクル変わって、もっとたくさんのアティファを知りたいと思った。出会って間もないのに、気がつけば君のことばかりを考えて1日を過ごすようになっていたんだ。それなのに俺は……」

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