6 / 8
幕間 クリスマス
狼谷とのコラボから数日が経ったクリスマス。
世間はクリスマスらしくケーキやチキンを片手に盛り上がり、街中はイルミネーションで輝いている。
ライブ配信もコラボやクリスマス企画をする人が大半だ。
「メリークリスマス!ということで!今日はVALOをやっていきたいと思います!」
[クリスマス関係ないじゃん]
[ぼっちか]
配信の内容を聞いてリスナーが予想通りの反応を見せる。
「いいじゃんぼっちでも!ここに来てるってことはリスナーもぼっちだろ!」
[ぐっ…]
[急に刺すな]
[肩組むんじゃねぇ どうせぼっちだよ!]
漸くデビューから3ヵ月を過ぎ、リスナーとのやり取りも最近は楽しめるようになってきた。
「だろー!仲良くしようよ」
[彼女と見てます]
[なに!?]
[ここにリア充が…]
急に現れたコメントに他のリスナーも反応を見せる。
普段はリスナー同士のコメントは注意したりするが、今日くらいは楽しく雑談するのもいいかもしれない。
「うわ、リア充いたわ!冷やかしか!?」
[東湖(とうご)さんきっかけで付き合いました!]
東湖の名前に目を開く。
東湖シン。
ルクレーヌ所属の2期生で、筬島から見れば大先輩だ。
「オレじゃないんかい!シンさんリスならシンさんとこいけよー!いや、うそ!行かないでっ」
[ユウのライフが開幕ミリまで削られた]
[シンさんかっこいいもんなー]
「シンさんかっこいいよな!オレ、シンさんに憧れてルクレーヌ入ったもん」
筬島がルクレーヌのオーディションを受けようと思ったのも東湖の影響が大きい。
元々ゲームをしながら配信を見るのが好きで、偶然おすすめに出てきた東湖の配信を見たのがバーチャル配信者を知るきっかけだった。
そこからバーチャル配信者を見るようになり、ルクレーヌがオーディションしている事を知って応募したのだ。
[ユウもシンさんの元リスか]
[ユウはシンさんみたいには無理だな]
[ガチ恋勢だったか]
「いや、違うし!ガチ恋とかじゃなく憧れ!無理とか言うな!今頑張ってるんだから!よし、ランクだランク!」
いつも弄られるので今日くらいはと思っていたが、結局リスナーのおもちゃにされるのだ。
頬を膨らませながらポチポチとゲームを進めていく。
[¥10000 メリークリスマス]
「わ、スパチャありが……え!?狼谷さん!?ありがとう!」
普通のコメントと違い、赤く色ついたコメントが流れた。
所謂投げ銭と言われるもので、金額によりコメントの色が変わるようになっているのだが、それの送り主が先日初コラボをしたばかりの狼谷なのだ。
[ハルトくんだー!!!]
[ハルトだ!]
コメント欄が狼谷の名前で次々埋まっていく。
[ぼっちのユウにプレゼント またVALOやろう]
今度は普通のコメントだが、内容はちゃっかり弄っているし。
「ぼっちて言うな!でも見てくれて嬉しい。ありがとー!またやろうね!メリークリスマス!!」
コメントを読み返せば「ユウ」と親しげに呼んでくれている。
大したことじゃないだろうが、思わず顔が綻んだ。
コメントとゲーム画面を往復しながら見るせいで、画面に映る邑楽もニコニコしながら右に左にと動いている。
[狼谷さんも見てます、と]
[ハルト配信してなかったっけ?]
コメントに目が留まった。
狼谷のスケジュールもちゃっかり把握してる辺り、本当にリスナーってすごいと感心する。
「え、そうなの!?わざわざ来てくれたんだ…どうしよ、めっちゃ嬉しい…しかもユウだって」
忙しい中わざわざ配信を覗きに来てくれたことが嬉しくて、頬の緩みが止まらない。
[よかったね]
[乙女かよ]
[俺たちも来てるだろ]
「そうだったそうだった。みんなもありがと!」
遊びに来てくれるリスナーも本当に嬉しいが、狼谷との仲が近くなったみたいで欣喜雀躍しそうだ。
「今日は狼谷さんもついてるからね!絶対ランク上げるわ!」
マウスをクリックしランクマッチを開始していく。
いつも自信をもってプレーしているが、今日はいつも以上のパフォーマンスが出せる気がした。
ともだちにシェアしよう!