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幕間 クリスマス

   狼谷とのコラボから数日が経ったクリスマス。  世間はクリスマスらしくケーキやチキンを片手に盛り上がり、街中はイルミネーションで輝いている。  ライブ配信もコラボやクリスマス企画をする人が大半だ。 「メリークリスマス!ということで!今日はVALOをやっていきたいと思います!」 [クリスマス関係ないじゃん] [ぼっちか]  配信の内容を聞いてリスナーが予想通りの反応を見せる。 「いいじゃんぼっちでも!ここに来てるってことはリスナーもぼっちだろ!」 [ぐっ…] [急に刺すな] [肩組むんじゃねぇ どうせぼっちだよ!]  漸くデビューから3ヵ月を過ぎ、リスナーとのやり取りも最近は楽しめるようになってきた。 「だろー!仲良くしようよ」 [彼女と見てます] [なに!?] [ここにリア充が…]  急に現れたコメントに他のリスナーも反応を見せる。  普段はリスナー同士のコメントは注意したりするが、今日くらいは楽しく雑談するのもいいかもしれない。 「うわ、リア充いたわ!冷やかしか!?」 [東湖(とうご)さんきっかけで付き合いました!]  東湖の名前に目を開く。  東湖シン。  ルクレーヌ所属の2期生で、筬島から見れば大先輩だ。 「オレじゃないんかい!シンさんリスならシンさんとこいけよー!いや、うそ!行かないでっ」 [ユウのライフが開幕ミリまで削られた] [シンさんかっこいいもんなー] 「シンさんかっこいいよな!オレ、シンさんに憧れてルクレーヌ入ったもん」  筬島がルクレーヌのオーディションを受けようと思ったのも東湖の影響が大きい。  元々ゲームをしながら配信を見るのが好きで、偶然おすすめに出てきた東湖の配信を見たのがバーチャル配信者を知るきっかけだった。  そこからバーチャル配信者を見るようになり、ルクレーヌがオーディションしている事を知って応募したのだ。 [ユウもシンさんの元リスか] [ユウはシンさんみたいには無理だな] [ガチ恋勢だったか] 「いや、違うし!ガチ恋とかじゃなく憧れ!無理とか言うな!今頑張ってるんだから!よし、ランクだランク!」  いつも弄られるので今日くらいはと思っていたが、結局リスナーのおもちゃにされるのだ。  頬を膨らませながらポチポチとゲームを進めていく。 [¥10000 メリークリスマス] 「わ、スパチャありが……え!?狼谷さん!?ありがとう!」  普通のコメントと違い、赤く色ついたコメントが流れた。  所謂投げ銭と言われるもので、金額によりコメントの色が変わるようになっているのだが、それの送り主が先日初コラボをしたばかりの狼谷なのだ。 [ハルトくんだー!!!] [ハルトだ!]  コメント欄が狼谷の名前で次々埋まっていく。 [ぼっちのユウにプレゼント またVALOやろう]  今度は普通のコメントだが、内容はちゃっかり弄っているし。 「ぼっちて言うな!でも見てくれて嬉しい。ありがとー!またやろうね!メリークリスマス!!」  コメントを読み返せば「ユウ」と親しげに呼んでくれている。  大したことじゃないだろうが、思わず顔が綻んだ。  コメントとゲーム画面を往復しながら見るせいで、画面に映る邑楽もニコニコしながら右に左にと動いている。 [狼谷さんも見てます、と] [ハルト配信してなかったっけ?]  コメントに目が留まった。  狼谷のスケジュールもちゃっかり把握してる辺り、本当にリスナーってすごいと感心する。 「え、そうなの!?わざわざ来てくれたんだ…どうしよ、めっちゃ嬉しい…しかもユウだって」  忙しい中わざわざ配信を覗きに来てくれたことが嬉しくて、頬の緩みが止まらない。 [よかったね] [乙女かよ] [俺たちも来てるだろ] 「そうだったそうだった。みんなもありがと!」  遊びに来てくれるリスナーも本当に嬉しいが、狼谷との仲が近くなったみたいで欣喜雀躍しそうだ。 「今日は狼谷さんもついてるからね!絶対ランク上げるわ!」  マウスをクリックしランクマッチを開始していく。  いつも自信をもってプレーしているが、今日はいつも以上のパフォーマンスが出せる気がした。

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