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迷走 (11)
その結果がどうであろうと、ちゃんと受け入れる覚悟はして来たつもりだ。
「それよりジストニアが何なのか知ってるのが意外でした。それも尚に聞いた?」
「私、こう見えて医者なんです。心療内科医なので専門では無いんですけど、ジストニアには心因性もあるので相談に来られる方もたまにいらっしゃるので」
仕事で海外に行っていたと言っていたからそれなりの職業なのだろうとは想像していたがまさかの医者で驚いた。
「そうなんだ」
「それで、実家の近所に鍼灸接骨院があって、昔からの知り合いなんですけど、全国からわざわざフォーカルジストニアの治療に来るくらい有名なんです。佐橋鍼灸接骨院というんですが、ご存知ないですか?」
「聞いたことないかな。そもそも診断受けた後も日常生活には何の支障も無い程度だったから、ベース辞めて結局治療もしなかったし」
当時何が原因で、どんな治療法があるのか等、自分でも調べて治療を受けるつもりだったが、結局実行しなかった。
あの時ちゃんと適切な治療を受けていれば今とは違う未来があったのだろうか。
「そうなんですね。……あの、余計なお世話かもしれませんが、もし治療を希望されるなら紹介します。院長も若先生も音楽好きで楽器もされてる方なのでお話も合うと思いますし」
「へぇ、そうなんだ」
これまで鍼灸接骨院にお世話になったことのない悠臣にとってはそこでどのような治療が施されるのか想像も出来なかったが、音楽好きだと聞かされると妙に親近感が湧いて興味を引かれた。
「でも、全国からわざわざ来る程有名なら予約だって何ヶ月も埋まってるんじゃないの?」
「そこは私が頼めば何とかなると思います」
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