35 / 110

悔悟 (1)

 莉子が尚行の家のインターフォンを押すとすぐに啓太が玄関の扉を開けてくれた。 「莉子さん良かった、すぐに連絡ついて。尚さんちに莉子さんの車あるのに莉子さんいないからちょっと焦りましたよ、……って、あれ、悠臣さん?」  莉子の顔を見て安堵した様子の啓太だったが、すぐ後ろに悠臣がいることに気が付き驚いて目を丸くしている。  どうやら莉子は尚行の家のガレージに自分の車を停めて、徒歩で近所のスーパーに買い物に来ていたところでばったり悠臣と遭遇したようだ。 「たまたま会ったのよ、それより尚は?」  悠臣が啓太に挨拶する間も与えず、莉子は煩わしそうに簡単にだけ説明すると靴を脱いで家の中に入って行く。 「店で倒れた後は意識はあったけど足元フラフラで一人では真っ直ぐ歩けない感じで、歩も一緒にいたから二人で支えてタクシー乗って帰って来ました。救急車呼ぼうかと思ったけど尚さんに頑なに拒否されて、今は寝室で寝てます」  尚行の仕事終わりに飲みに行く予定で、尚行の仕事が終わるのをレコードを物色しながら店内で待っていた時に、尚行は店のバックヤードで倒れたらしい。  リビングに入ると二十代半ばとおぼしき男が換気扇の下で煙草をふかしていた。その姿を見て悠臣は「あっ」と思わず声を漏らした。二週間前、BAR『Strange Brew』で尚行と一緒にいた男だ。 「莉子さん、お久しぶりです」  莉子に気が付いた男はすぐさま挨拶をする。更には莉子の後ろにいる悠臣に視線を移すと真顔で軽く頭を下げた。 「久しぶりだね、歩くんが一緒で助かったよありがとう、啓太一人だったらどうなってたことか」 「いやほんとに、啓太さんオロオロするだけでぶっちゃけ邪魔だった。腕力だけはあるから尚さん運ぶ時は居てくれて良かったけど」  莉子は勿論、明らかに年下と思われる歩と呼ばれたその男にも弄られる。 「あたし、ちょっと尚の様子見て来るね」 「あ、俺も行く」
0
いいね
0
萌えた
0
切ない
0
エロい
0
尊い
リアクションとは?
コメント

ともだちにシェアしよう!