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悔悟 (3)

「煙草、吸ってもいいですか?」  コーヒーメーカーのスタートボタンを押し、煙草を手に換気扇の下に移動してから念のため歩は悠臣に声を掛けた。 「あぁ、どうぞ」  相変わらず青い顔の悠臣は一度顔を上げてくれたが、またすぐに気まずそうに目を逸らす。  歩はゆっくりと煙草の煙を吐き出しながら時折そんな悠臣を盗み見ていた。  尚行や啓太、BAR『Strange Brew』のマスターなど、悠臣と面識のある人の話から、初対面でも話しやすく気さくで穏やかな大人の男、そんな人物を想像していたのだが、今、歩の目の前にいる悠臣からは全くそんな印象は受けない。    ――こういうの、あんまり得意じゃないんだけどな。  もう一度煙草を吸ってから歩はゆっくりと口を開いた。 「青木さん、尚さんが倒れたの、自分のせいとか思ってます?」  ふいに声を掛けられ少々驚いた様子で悠臣は歩に視線を向けた。 「……実際、そうだろ。……俺が追い詰めたようなもんだよ」  そう言って苦しそうに顔を歪めた。そんな悠臣に向かって歩はきっぱりと言う。 「いや、どう考えたって尚さんの自業自得でしょ」 「え?」 「はたから見てて無理言ってるのは明らかに尚さんの方だし、俺は正直青木さんのメンタルの方が心配でした。尚さんだってそれわかってるから本当は青木さんのことが心配だけど後にも引けなくて自分で自分の首絞めてた。だから青木さんが気に病む必要は無いですよ」  涼しい顔でなかなかに厳しい言葉を迷うことなく言い放つ歩を呆気に取られた顔で見つめていた悠臣が短く息を吐く。 「それでも、別のやり方があったかもしれない」 「結果論ですよ。それよりもお二人はもう少し話をした方がいいと、俺は思います」 「話?」
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