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悔悟 (6)

   尚行を自宅に連れて帰る際タクシーに乗って来ていた啓太と歩をそれぞれ送っていくため、莉子はガレージに停めてあった自分の車に乗り込みエンジンをかける。  見送りに出てくれていた悠臣に向かってもう一度頭を下げてから車を発進させた。 「……莉子さん、良かったんですか?」  尚行の家が見えなくなった頃、後部座席に座る啓太が遠慮がちに尋ねた。 「何が?」 「いや、前に俺と喋った時、悠臣さんとのこと、反対してるっぽかったから」 「……別に認めたわけじゃないし、青木さんがダメなわけでもない。あたしは誰が相手でも簡単には認めないわよ。……ただ、」 「ただ?」 「ちょっと心配だったの。青木さん、尚が倒れたって聞いて、あたしより動揺してから。そばにいる方が安心するんじゃないかと思って」  尚行が倒れたと電話で聞かされ莉子もかなり動揺していたが、ついさっきまで穏やかに話をしていた悠臣が目の前で顔面蒼白になって行く様を見たことで冷静さを取り戻せた。 「確かに悠臣さん、尚さんの家に来てからもずっと落ち着きない感じでしたもんね、大丈夫かな」 「子供じゃないんだし、後は自分たちで何とかするでしょ」  車の外をぼーっと見ながら歩がさらりと言い放つ。 「……まあ、それもそうだな」  相変わらずの歩のクールさに啓太も莉子もそれぞれ苦笑いを浮かべた。
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