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回顧 (17)

「あー、まぁ、それなりに……」 「え〜、いまいち?」 「……そういうわけじゃないけど」 「もしかしてあーゆー目にあった後だから気が引けてる?」  悠臣が僅かに顔を顰めたのをルイは見逃さなかった。揶揄うような目で悠臣を覗き込むようにしながら続けて言う。   「おにーさん遊び慣れてなさそうだもんね〜」 「殴られるようなことしてんだから今更別に気にしてない。……ただ、なんとなく面倒くせぇなって思って気が乗らないだけ」 「ふ〜ん、……おにーさんていかにもな遊び人て感じじゃなくてなんかワケありっぽいから、女の子からしたらわたしが支えてあげたいとか立ち直らせてあげたいとか思っちゃうのかもね〜」  他人の動向などまるで興味無さそうな割によく観察していて感心したが、否定も肯定も面倒で黙っているとルイはまたすっと身体を寄せてくる。 「女の子はちゃんと見極めないと、遊びのつもりが本気になっちゃうこと多いからね〜」  悠臣の肩に頭を乗せてルイはくすくすと笑う。 「……おにーさんてさぁ、男もイケる?」  横目でルイの様子を窺う。目が合うとすぐあざとい微笑を浮かべるルイの表情や仕草から、何となくそうではないかと思っていたので驚きはしなかったが、自分が誘われるとは悠臣は想像していなかった。 「さぁ、ヤったことねぇから知らねぇ」  さも興味が無いかのように、あからさまに冷めた声で答える。 「じゃあ、試してみない?」  流石に男は無理だと、きっぱり断ろうとルイの方を向くと目が合ってニッコリ余裕の笑顔を見せつけられる。  女でも男でも面倒な人間はいる。だけど目の前のこの男ならそういった類の煩わしさとは無縁だろう。知り合ったばかりでルイのことは本名も素性も何も知らないが、それだけは確かに思えた。  何よりルイの見た目はこの数週間で悠臣が出会ったどの女性よりも妖艶で独特な色気があった。一度でもそんな風に考えるともう好奇心を止められない。 「試して無理なら帰る」 「ははっ、もちろんいいよ。……じゃあ行こっか」  唇が触れそうな距離で耳元で囁くようにそう言うと、ルイは嬉しそうに悠臣の腕に絡みついてくる。そのまま席を立ち店を出るとルイに導かれるままタクシーに乗り込んだ……。

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