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前進 (5)
「……へぇ」
初対面の時の印象だけだと意外とも思えたが、その後の莉子の尚行に対する献身ぶりを思うとその一途さに納得もいくような気がする。
「けど、十代の頃って四歳上は恋愛対象になっても四歳下は難しいだろ?全然相手にしてもらえなくて、高校の頃は莉子もモテたし別の男と付き合ったりしてたけど、なんだかんだ長続きはしなくて、その頃恭ちゃんも接骨院継ぐのに学校行って国家試験受けるとかで地元離れてて疎遠になってたし、恋愛よりも勉強に力入れるようにしてそれで医者になって、で、俺がこっち戻って恭ちゃんとバンド始めたのをきっかけに莉子もまた会うようになって、それで付き合い始めた」
尚行にしては珍しく、まるで自分のことのように嬉しそうに話してくれた。
「そうなんだ」
「そ、だから子供の頃から知ってるほとんど兄弟みたいな関係の恭ちゃんが義理とはいえ本当の兄になるのがなんか変な感じするだけで、嫌とか反対する気持ちは全く無いかな。……ただ」
晴れやかな表情で言い切ったかと思えば、尚行はすぐに眉間に皺を寄せた。
「……ただ?」
「あー、これ莉子と恭ちゃん、つーか誰にも言うなよ?……さっさと結婚すれば良いのにとか口ではよく言ってたのに、実際莉子が嫁に行くって決まったらちょっと寂しいなって思ったのは事実」
開放的な空気に触発されてか、はたまた先週までの一件を経ての心境の変化か、珍しく素直な気持ちを口にする尚行に悠臣は少しばかり驚いたが、恥ずかしそうに唇を尖らせそっぽを向く尚行がやけに可愛く思えてつい口角が緩む。
「そうか、けどちょっとわかる気もするな。俺も妹の結婚が決まった時はちょっとだけ寂しかったかな」
「え?悠臣って妹いんの?」
知らなかった、と不満そうな尚行にもう少し詳しく教えてあげる。
「あぁ、二歳下の妹が一人。結婚したのは三年くらい前で、尚と莉子ちゃん程仲良い兄妹って感じじゃないけど」
「……仲良いかはわかんねぇけど、莉子には、ほんとに感謝してんだよ」
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