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決心 (2)
「翔吾のところはお義父さんが早くに亡くなってて、お義母さんは翔吾のお姉さんが結婚した時から同居してるの。だから二人とも賛成してくれてるし、翔吾も良いよって言ってくれてる。それから、うちのお父さんとお母さんには、お兄ちゃんとちゃんと話し合ってって言われた」
「そうか、うん、俺もそれでいいよ」
就職して再度家を出た時からこれまで実家に戻るなど正直考えてもみなかった。子供が産まれ、自分の家族とお互いの家族の将来までしっかり考えている奈月に感心するというよりむしろ驚いた。子供の頃はどちらかというと内気でいつも悠臣の後ろに隠れているような子だったのに。
「ありがとう、でも今すぐってわけじゃないし、同居するようになってもここはお兄ちゃんの実家なんだから、気にせず帰って来てね」
ほっとした顔をした後、奈月はようやく笑顔になった。
それから程なくして翔吾と長女の美結奈 、買い物を終えた両親がほぼ同時に帰って来た。公園で遊んでいて汚れたらしい洋服を着替え手洗いうがいをしてから美結奈がベビーベッドへ近付くと眠りから覚めた直後の弟、陽太 は機嫌良くパタパタと手足を動かしてた。その様子を見てから美結奈はオムツを一枚持って来て奈月に手渡す。
「あぁそうだね、オムツ変えてあげようか」
奈月が手際良くオムツ交換を済ませると美結奈はそっと弟の手を握ったり、頭を優しく撫でてあげていた。そんな小さな姉弟の姿を微笑ましく見ていると悠臣はふいに莉子と尚行の姉弟を思い出す。あの二人の場合は双子だから実際にはこんな場面はありえないが、それでも小さい頃から莉子もきっとこんなふうに尚行の世話をしたがったのだろうと幼い頃の二人を想像するだけで気持ちが和らいだ。
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