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導き (1)

 翌日は月曜日だが祝日のため、悠臣は夕方から尚行の家に来て夕食の用意をしていた。午後七時過ぎ、玄関扉の開く音がして早番で仕事を終えた尚行が帰宅した。 「おかえり」 「ただいま〜、腹減ったー、今日の飯何?」 「んー、唐揚げとかフライドポテトとか、あとなんか無性にハンバーガー食いたくなって作ってみた」 「マジ?すげぇ〜、やったぁ」  尚行はご機嫌で手を洗いに洗面所へ向う。  夕食としてはなかなかハイカロリーだがたまには良いだろう。何より尚行はその細身の体型に似合わずこういったジャンクフードが大好物だった。  尚行がリビングに戻って来たので悠臣は冷蔵庫から缶ビールを出そうとしたが、席に付かずにソファのある方向を真顔でじっと見ている尚行を不審に思って声を掛ける。 「尚、どうした?」 「……あれ、なんで?」 「え?あぁ、返そうと思って持って来た」  尚行の視線の先には悠臣がずっと借りていた尚行のベースがケースに入れて立て掛けてあった。 「……なんで、もういらないって、こと?」  顔を歪め、苦しそうにそう言う尚行の姿にはっとして悠臣は立ち上がり尚行に駆け寄った。 「違う!そういうわけじゃなくて、飯食いながら後でちゃんと話そうと思ってたんだけど……」  どんどん険しくなる尚行の表情に悠臣は狼狽える。 「俺、ベース買ったんだ」 「……え?」  言いながら初めてアルバイトで稼いだお金でベースを買った高校生の頃を思い出した。あの時は嬉しくて友達に自慢しまくっていたけど、今はなんとなく気恥ずかしい。相手が自分よりもギターもベースも断然上手い尚行が相手だからだろうか。  照れ臭くて一瞬目を逸らしていたが、悠臣の言葉を理解した尚行が瞳を輝かせている。 「だから、尚のベースは返そうと思って、うちワンルームだしベース二本置いてるとちょっと圧迫感あって」 「もう悠臣んちにあるの?」 「あぁ」 「見たい!今から行こう!」  興奮を抑えられない尚行が悠臣の腕を引っ張る。 「今から?飯は?」 「後でいい!……つーかこれ持って行って悠臣んちで食おう」  嬉しそうに笑顔でそう提案されて、拒む理由などあるわけがない。  偶然にもテイクアウト向きのメニューだったため保存容器に詰め込み大きめの袋に纏めて入れて、ついでに冷蔵庫で冷やしておいた缶ビールも持って尚行の家を出た。  悠臣のマンションまでは徒歩で五分もかからない。それでもはやる気持ちを抑えられない尚行の足は自然と早歩きになっている。そんな尚行の様子を見ながら隣を歩いているだけで悠臣は何故か楽しくなってきて、すぐにマンションに着いてしまったのが何だか残念に思えた。  鍵を開け、部屋の中へ入ると悠臣が電気をつける。目的の物を見つけると尚行はゆっくりとそれに近付いた。

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