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確信 (9)
「それでもさっき尚も言ってたけど、一緒にバンドやるのはまた別問題だし不安はあったんだけど、……まぁその辺はあんまり心配しなくて良さそうだな」
バンド内恋愛は男女間でも揉める原因としてよく問題になる。それが男同士ともなればより不快に思われてもおかしくないが、そこは悠臣よりも尚行のことをよく知っている人たちが相手なのであまり神経質になる必要はなさそうだ。
「莉子ちゃんにはまだ警戒されてるっぽいし、俺が尚の両親に気に入って貰えるかもわかんないし」
「莉子はともかく、うちの親は大丈夫だと思うけど、……悠臣、そんなことまで考えてたの?」
話が飛躍し過ぎて付いていけない。
「昔なら自分たちが良ければ周りは関係ないって思ってたけど、全員は無理でも頭に浮かぶ大事な人たちくらいには正直でいたいって、今は思うんだよ」
ただでさえ心配をかけていた家族や友人のありがたみを、尚行と出会いまたベースを始めたからこそ知ることが出来た。
「尚の周りは理解してくれるかもしれないけど……」
悠臣の言葉にはっとする。
「……悠臣の、家族?」
尚行がゲイであることは莉子をはじめ、尚行の両親やバンドメンバー、極親しい人にとっては周知の事実なので今更驚かれることはない。だがこれまで異性と付き合っていた悠臣が同性と付き合うとなると、悠臣の家族は当然、簡単には受け入れられないだろう。
「うん、いい歳して家族の許可とか求めてるわけじゃないんだけど、それでもこれまで迷惑かけて生きて来た分、あんまり心配させたくはないし……」
真剣な表情でそう言われては何の反論も出来ない。悠臣だけでなく、悠臣の身内にまで迷惑をかけるくらいならもう黙って身を引くしかない、尚行はそう思い始めていた。そんな尚行に向かって悠臣が告げる。
「だからこの前実家帰った時にさ、思い切って聞いてみたんだ」
いちいち勿体つけた悠臣の話し方に尚行は段々苛々してきた。
「……何を?」
眉間に皺を寄せ面倒くさそうに聞く尚行に対して、悠臣は顔色一つ変えずに続けて言う。
「俺が男と付き合ったらどう思う?って」
予想もしていなかった展開に尚行は衝撃で声も出せず、再び目を見開いて固まってしまった。そんな尚行の反応を見て満足そうに笑った悠臣はつい先日の家族との会話を思い出す……。
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