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確信 (12)

「尚と莉子ちゃんの話を聞くたび良い姉弟だなって羨ましく思ってたけど、うちの妹も負けてなかったよ」  実家での経緯を話し終えてから悠臣はそう付け加えて笑った。一方でまだ現状を把握出来ずにいる尚行はしばらくの間呆然とした後、節目がちにゆっくりと口を開く。 「……もし、反対されたら、どうするつもりだったんだよ」  後になって言っても仕方ないが、どうしても気になった。 「最初に言ったろ?俺はこれから先もずっと尚と一緒にいたいって。誰に何を言われてもそれは揺るがないし、家族に話をする前からそこはもう心に決めてた。だから、反対されたとしても、家族とはしばらくは疎遠になったとしても、いつかは理解して貰えるよう努力する覚悟で話をしたんだよ」  真っ直ぐ目を見ながら丁寧に答えてくれる悠臣の様子から、本気で言ってくれているとわかるとようやく実感が湧いて来て、ふいに涙が込み上げて来そうになった尚行は慌てて顔を背ける。 「でもその先に進むにしても俺の気持ちだけじゃ意味ないし、実家で話をしてる時は正直まだ曖昧な部分もあったんだけど、ちゃんと言葉にして話してるうちに確信が持てた」  一旦言葉を区切り、悠臣は尚行の様子を窺うが相変わらず俯いたままだ。少し心配になって声を掛ける。 「尚、聞いてる?」  悠臣の言葉に少しだけ顔を上げると尚行は小さく頷いてみせた。 「尚の隣に堂々と立つためには借り物じゃなくて自分のベースが必要だって思って、ほんとはもうちょっと実家でゆっくりする予定だったのに、衝動のまま次の日ベース買いに行って、お前に会いたくなって帰って来た」  悠臣にしては珍しく思ったことをストレートに表現したつもりだが、尚行は依然として微動だにせず無言のまま俯いている。 「……尚?」  もう一度呼び掛けると尚行はようやく目線を上げてくれた。 「……ほんとクソ真面目だな。悠臣がそういう性格だって最初っから知ってたけど、普通そんなこと先に身内に言ったりとか、しねえだろ」  “クソ真面目”と久しぶりに言われて、初めて二人で飲んだ翌朝のことを思い出し、悠臣はつい笑ってしまった。 「それはまぁ俺も思った。お前にまだ何の返事もしてないのにって。でも言葉にすることで気付けた部分もあったから、先に言って良かったと思ってる」 「……いつから?」 「何が?」 「いつから、俺のこと、……好きだった?」  俯いたまま呟くように尚行が尋ねる。
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