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第11話 どちらにしようかな
胸に装着して刺激される類いの玩具で――二つのアタッチメント、どちらが良いか。
郁は、躊躇いながら、答える。
「……ブラシ……みたいなの……、つかったこと、ないし……」
「解ったよ」
煌也が、準備している間、周りから声が聞こえてきた。
「郁ちゃん、電動の刷毛とかも気持ち良いよ?」
「電動じゃなくても、郁ちゃんくらい、ビンカンだったら、絶対好きそうだよね。羽根とかもね……向こうにあるから持ってきて上げようか?」
羽根……で何をされるのか、郁は見当も付かなかった。けれど、ギャラリーの人たちが言うことなのだから、多分、郁が気に入りそうな刺激があるのだろう。
「郁、して欲しい? ……羽根で」
煌也が、郁の胸に、玩具を付けながら聞く。女性用のものらしく、うまく取り付けることが出来なかったので、固定するために、テープを取りだしているが、少し、難航しているらしい。
「……ちょっと、これ付けるの、手間取ってて、郁が退屈そうだから、お願い出来ます?」
煌也がギャラリーに呼びかけると、「勿論」と言いながら、男たちが動く。
「おれは、反対側の方、付けるの手伝うよ」
別途申し出た男が、手伝って、胸に玩具が取り付けられていく。
まだ、足は開いて、奥まで丸見えな状態で、胸に、どう考えても普通の人ならば一生見ることがないような、淫猥な玩具を取り付けられている。乳首をすっぽり包み込むような形の吸盤状のそれは、内部にアタッチメントを仕込むことが出来て、それで刺激を変えることが出来るらしい。
アタッチメントは、乳首の先端に触れるか、触れないかというギリギリの所に、調整されている。
(……あ、いやらし……、これ……、電源入ったら……)
どんな刺激があるのか、楽しみになってしまう。
「郁ちゃん、期待してるの?」
男が行くの顔を覗き込みながら、笑う。
「っ…………っ」
「郁は、期待してるんだよね。今日も、コレ、自分で選んだんだもんね」
「へぇ~♥ 郁ちゃん、胸好きだよね。もう、胸だけでイけるし」
胸だけでイける、と言われて、恥ずかしくなる。実際、はしたなく絶頂する姿を、この男にも何度も見られているのだ。
「……胸、好きだよね、郁」
「うん……、好き……」
「……前、ローター使ったことがあったけど……、郁は、自分でするとき、ココはどうするの?」
「抓ったり……、してるよ……?」
「郁ちゃん、ローターとかは?」
「あっ……その、たまに、つかい、ます……」
ローターを使うと、あっという間に気持ち良くなってしまうから、自分でするときは、あまり使わない。できるだけ、快感が続く時間が長引いた方が好みだった。
「……郁ちゃんのお隣の部屋、毎日、郁ちゃんの可愛い声が聞こえてきて、大変だろうな」
顔が赤くなった。
「なっ……っな……それ、……それは……」
「ああ、たしかに。……別に、防音とか、しっかりしてるわけじゃないんだろ? 隣のヤツに、郁の可愛い声を聞かせてると思うと、ちょっと、腹立たしくなってくるな」
「っ……っ」
オナニーならば、毎日している。毎日して、馴らしておかないと、後ろが、固くなってしまうと言われていたからだ。もちろん、それだけではなくて、毎日、したくて溜まらなくなっているのだが……。
「まあ、隣のヤツも、毎日郁の声を盗み聞きしているかも知れないしな……」
そういえば、隣の人と顔を合わせたとき、なんとなく、変な顔をしていたのを、郁は思い出した。
(……あれ……聞かれてたんだ……っ)
恥ずかしくて、溜まらない。
「郁ちゃんの声、可愛いから大丈夫だよ。……煌也さんは、郁ちゃんの部屋でしないの?」
男性の問いかけを聞いて、郁は、ドキっとした。
そういえば、出会ってから今まで、セックスをしたのは何回もある。けれど、今まで、一度もお互いの家を行き来したことは無かった……。
「まあ、ここでだけ、かな」
「家の方が、いろいろ出来るんじゃない……? ホテルとかさ」
「ま、そうなんだけど……ね」
煌也は、なんとなく明確な返答を避けたようだった。
郁と煌也の関係、を一番端的に示す言葉は、間違いなく、『プレイメイト』だったが……。それ『だけ』というのも、少し、悲しい。
胸の奥が、もやもやするような感じがあった。
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