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第16話 隣の人に声が聞かれてる・・・

 達したばかりで、荒い息を吐きながら、郁は、誰かからの言葉を思い出していた。 『隣の人に声が聞かれてるんじゃ……』  たしかに、このアパートは、隣の人の生活音が聞こえるときがある。郁の声は、聞こえているかも知れない。 (あ……、毎日、一人でしてるの……バレてたらどうしよう……)  隣に住んでいるのは、男性だったと思う。見たことはあるような、ないような、よく解らない。  けれど、時折、シャワーを使う音だったり、足音だったり、包丁を使う音が聞こえてくるので、間違いなく、誰かは住んでいるはずだった。 (……もし……)  誰かが、聞き耳を立てていたらどうしよう……と思ったら、また、気分がムラッと来た。  煌也にもよく言われるが、見られている、と思うと、どうしようもなく、興奮するようだった。  こんな気持ちは、今まで生きてきて一度も感じた事がない。だから、郁自身、戸惑っていた。  誰かが―――自分の、痴態を見ている……。  普通ならば、恥ずかしくてたまらないだろうが、その、恥ずかしさが、癖になっている。  煌也が、耳元で甘く囁く声も、腰にダイレクトに響いてくる感じがあって良い。煌也の声は、すごくいやらしくて、聞いているだけで、頭の芯がぼうっとしてくる感じがある。 (……煌也なら……)  次は、なんと言うだろうか……。  ベッドの上で、ぶるぶると振動を繰り返しているローターを見遣りながら、なんとなく、郁は考える。 『郁』  と煌也なら、甘く囁くだろう。 『もっと、足を広げて。そうそう……、郁、M字開脚好きだよね♥』  膝を立てて、Mの字になるように、足を大きく開く。  アナルが、ひくっと動く。そこに、刺激が欲しくて、たまらなくなっていた。 『……いつもしてるみたいに、してごらん』  郁は、ぼんやりしながら、ローションを手に取って、アナルへ指を沈めた。 「ん……っ……っ」  ゆっくりと、指が沈んでいく。毎日馴らしているそこは、指の一本は、易々と受け入れる。ローションのおかげで、出し入れもスムーズだった。内壁を擦るようにして動かしていくと、身体が、時々、ぴくっと跳ねる。 「んっ♥」  気持ち良いところは、解っているが、まだ、快楽の核心に触れたくない。 『一本だけ……? それで、満足なの? 郁』  指を二本に増やして、動かしていく。先ほどより、と刺激が強くなって、甘い声が止まらなくなってくる。 「っん……っ♥ ……っ♥ っんんんっ♥」  指を出し入れする速度が忙しなくなって、息が上がる。 「あっ……っん♥ ……っんっん……っん……っ♥ あっ、も……っ、もっと……っ」  もっと、確かな質感が欲しくて、傍らから、エネマグラタイプの電動プラグを引き寄せて、一気に、挿入した。 「ぁっあああっ♥」  気持ちが良くて、喉が仰け反る。 「あっ……っっん……っ♥ あっ、お……っきい♥」  指とは違う、容積が、ナカを押し広げてくる。  煌也のそれとは比べるべくもないが、ナカが、満たされる感じがあった。 「は……あ……♥  郁の薄い胸が、大きく上下している。額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、郁は、ベッドの上に転がっているリモコンを手に取った。これで、ナカが動き始めるはずだった。 (ん……なに、これ、ボタン……よくわかんな……)  動作する場所は、三カ所のはずだった。けれど、どのボタンでどこが動くのか、よく解らない。  もどかしくなりながら、電源を入れる。 「ひ……っあっんんんっ、あっ……っ、いきなり……っ♥」  三カ所同時に、刺激が始まる。  ナカは、指の動きに近い、くいっと内壁を抉るような動きを再現していて、アナルの入り口の所は、強い振動。会陰は、とんとんと優しく叩かれるような感じだった。 「ん……~っ……っ!! ぅっんぅっ♥ あっ……っあっ♥」  リモコンを操作し直すことも出来ずに、あっという間に、追い詰められてしまう。 『郁は……すぐイッちゃうね』  煌也が、笑うのを思い出す。セックスとか、いやらしくて、気持ちが良いことが、好きだというのは、最近自覚した。けれど、とにかく、あっという間に、イッてしまう。 (あ……、まだ、初心者なのに、煌也が、たくさん、するから……♥)  ナカもアナルも、気持ちが良くて、喘ぎ声が止まらない。 (隣………)  隣のことも気になるのに、郁は、まだ自分の足を抱えて、M字に脚を開いたままだ。汗で、手が滑るが、まだ、M字をキープしている。体中が、興奮して薔薇色に染まっている。 「あっ……っイっちゃ……♥ きもち……♥」  上気した、夢うつつな表情で、郁は甘く喘ぐ。  一度達しても、電動プラグを止めることが出来なくて、刺激が止まらない。 「あっ……も……っ、も……っダ……っダメ……っあっ♥ また……っあっ♥ も、イッてる♥ イッてる……っ♥」  身体が大きく痙攣して、郁は、目の前が一瞬、真っ白になるのを感じた。  快楽の波が、津波のように押し寄せて、郁の意識ごと、ごっそりと飲み込んで攫っていく。 「ひっ……っあっ、あああああああ……っ♥」  ひときわ大きく鳴いたあと、荒い息を吐きながら、郁は、ベッドに転がった。  奥では、まだ、電動プラグが、モーター音を響かせながら、淫猥な動きを見せていた。

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