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第19話 すっぽんと土産話

 金曜までの間、郁は、後ろをほぐす目的も兼ねて、毎日、玩具を使ってオナニーに励んでいたし、肌を保湿することにした。  今まで、化粧水くらいは使っていたが、これではダメかも知れないと思って、乳液とクリームを追加してみることにした。すると、会社でも女性たちから、 「えっ、二階堂さん、何か、良い事ありました? めっちゃ、肌、綺麗なんですけど」  と声を掛けて貰えたので、まんざらでもなかった。  郁としては、触れた感触が違うので満足していたのだが、見た感じも変わっているという。それは、満足な仕上がりだった。 「ちょっと乾燥するから、スキンケアを少し始めてみたんだ」  郁の答えに、女性社員たちは「化粧水はこれ」「乳液はこれ」「オイルならこれ」「ファンデーションか、フェイスパウダーはどうか」「眉を調えると良い」と瞬く間にアドバイスが集まったので、郁は、 (もしかして、今まで、みっともないと思われていたかも知れない)  と、危機感を持った。  とにかく、二週間ぶりに煌也と一緒に、ブルー・ムーンで過ごすことになるので、郁は、今朝から、期待して過ごしていた。  今日は、十八時半で上がると伝えていたので、問題なく帰宅出来、十九時に、例のすっぽんの店で煌也と待ち合わせをした。  すっぽん料理は、生き血など、ちょっと怖いものもあったが、どれも美味しかった。元々、食事の量が多い郁なので、張り切って食べていたら、煌也に「今から、運動するのに良いの?」と笑われたので、セーブすることにしたが、それでなければ、スッポン鍋は、丸ごと食べきっていただろう。  〆の雑炊まで幸せな気分で食べていた。 「あっ、そうだ、郁、これ……シンガポール土産」  煌也が、紙袋を差し出してくる。 「えっ? お土産?」  まさか、土産を渡されるとは思ってもみなかったので、郁は、驚いてしまった。 「中、見ても良い?」 「勿論」  シンガポールで何が有名なのか、郁には想像もつかない。 (……マーライオン……)  仮に、マーライオンのキーホルダーや、マーライオンのクッキーだったとしても、突っ込まないでおこう、と心に決めつつ、郁は中に入っていたものを取り出す。  いくつか、入っていた。 「買ってから気が付いたんだけど、郁は、自宅で……紅茶をティーバッグで入れて飲むコトってある? というか、ヤカンか電気ポットみたいなものは……ある?」  煌也が、なんとも聞きづらそうに問いかける。  郁の食生活の悲惨なことを、煌也は良く知っているのだ。 「……カップラ作るんで、お湯は沸かせますよ」  一応、電気ケトルがある。すぐに湧くので、便利に使っている。大体、コンビニ弁当とカップラーメンを往復する食生活なので、かなりの頻度で使用している。 「ああ、良かった。……それ、TWGの紅茶と、プラナカンのマグカップ。それと、俺のイチオシのカヤジャム。とりあえず、薄いトーストに塗って食べれば朝食にぴったりだから食べて」 「すごい……なんか、沢山ありがとう。カヤジャムって何?」 「えっ? ……あー、カヤトーストっていうのがあるんだけど、それに使われてるジャム。シンガポール名物なんだよ。それで、俺は、ホテルの朝食をキャンセルして、カヤトーストを食べに行くこともあって……」  ふうん、と聞きながら、郁は、手元のお土産を見やった。  煌也は、美味しい食べ物を食べるのも、好きなのだろう。いろいろと、こだわりがあって、その中で、素敵なものを郁に教えてくれている。 「大事に食べる」 「……とりあえず、まあ、口に合えば……。俺は、郁が、電気ケトルの一つも持っていないかも知れないと思って、帰りの飛行機の中、気が気じゃなかったんだよ」  煌也は、大仰にため息を吐いた。 「俺って……そんなに、生活が壊滅してるかな……」 「郁は、まだ、自分の生活に興味がないんでしょ。でも、自分の生活にハマったら、凄く拘りそうだよ」  と言ってから、耳元に甘く囁かれた。 「性生活のほうは……、自分で充実させてるもんね」 「そ、それは……っ」  指だけではなく、玩具を使ってまで自分を慰めて、快楽を楽しんでいる。  そして、今からも――――。 「……郁、すっぽんってわざと?」 「えっ?」 「すっぽんって……かなり精力付くって言うしね? 二週間分、郁が、たまってるんだろうなあと思ってたんだよ」 「えっ、えええっ……そ、そんなことは……美肌だとは思ったけど……」 「……期待通り、朝まで頑張るよ♥」  煌也に甘く囁かれて、郁の身体の奥が、きゅんっ♥ っと、疼いた。

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