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第22話 ファーストペンギン

 プレイルームに移動する間、何人かが、郁を見ていた。  じっとりとした視線を感じて、郁は、体温が上がってくるのを感じる。  今日は、まだ、本格的なプレイをしている人たちはいなかったので、郁たちが『そういう雰囲気』を作るのを期待しているのだろう。 「……ファーストペンギンって、なりたがらないもんなんだよね」  煌也が笑う。 「なにそれ?」 「んー? ペンギンって、魚を取るときに海に入るでしょ? でも、海は危険だから、最初に入るのは躊躇うんだよね。で、誰かが入ったら、皆も後に続く事が出来るって言うヤツで」 「こういう所で、それ目的なのに?」  不思議なことだと思いながら、郁は首を捻る。 「そりゃあ。……乱交パーティなんかでも、意外に、みんな、モジモジして、ファーストペンギン待ちするもんだよ」 「煌也は経験あるんだ。乱交パーティ」 「妬いた?」 「妬いて欲しいの?」  郁の返しに、煌也が「そうきたか」と苦笑する。 「まあ、俺は、郁が妬いてくれたら、ちょっと嬉しいかな。……俺は、郁に、俺以外としないでね? って言ってるけど、郁は、言ってこないからね」  煌也の言葉は、どこまで本気なのか、よく解らない。  そうこうしているうちに、カップル達が座るソファが並ぶフロアを横切って、プレイルームまでたどり着いた。  ベッドに上がって、そのまま、座る。その隣に、煌也も座った。なんとなく、気恥ずかしい気分になっていると、煌也が、スーツのポケットから、何かを取りだした。 「なにそれ?」 「ん? 目隠し」 「……えっ、目隠しするの?」 「勿論。……郁がイヤじゃなければ。目隠し用の、アイマスク、借りてきたし」 「えっ? いつの間に?」 「マスターが渡してくれたんだよ」  くすくす、と煌也は笑いながら、郁をそっと抱き寄せる。そのまま、キスをされた。唇が、ゆっくりと押し当てられる。柔らかくて、熱い唇だった。その唇に、下唇を挟まれたり。唇を舌先で撫でられたりして居るうちに、身体が火照ってくる。 「それで。目隠し、しても大丈夫?」 「……っん♥ 良いよ……、煌也が、したいなら……」  たまらなくなって、煌也の舌先に舌を絡める。 「郁、……キス、上手くなったよね」 「……っえっ?」 「前は……もっと、遠慮してた。今は、キスがしたくてたまらない感じ……」 「ぅん……キス、好きだけど……キスって……絶対、相手がいないと出来ないから……」  思わぬ郁の言葉に、煌也が笑う。 「んー……たしかに、俺も、キスのアダルトグッズはみたことないかも知れない……。女の子のクリを吸ったりしてくれるヤツとかは見たことあるけど……」 「……久しぶりだから……、キス……」  二週間ぶり、のキスなのだ。  思い切り貪りたくて、舌を絡ませて、吸って、歯を立てて……口腔を舌で撫であって……、長い長いキスの間に、欲望が形を変えている。それを察した煌也が、服の上から、優しく、そこを撫でている。 「あっ……っ煌也……の手……♥」  キスの合間に、途切れ途切れに、郁が喘ぐ。 「ん? ……手、がどうかした?」 「……んふ……っ♥ 手、気持ち良い♥」 「もっと、して欲しい?」 「んっ、♥ もっと……、触って……、直接……。煌也の、手……♥」  素直に訴える郁の言うがまま、煌也は、ゆっくりと、郁のスラックスをくつろげた。  そのまま、下着まで脱がせてしまうと、形を変えて脈打つ性器が晒される。 「……あ♥ 煌也の……手……♥ 久しぶり♥」 「どうして欲しい?」 「……手で……、して欲しい」 「手で、良いの?」 「うん……」 「口でも良いのに……郁、フェラされるの、ちょっと苦手?」  言われて、恥ずかしくなった。なんとなく、そこを口でされることに抵抗感があるだけだ。 「……だって……」 「まあ、いいか……じゃ、そろそろ、目隠しするね……その方が、次、何されるか解らなくて、良いでしょ?」 「うん……」  少し、の怖さはあるが、本気で嫌がれば、絶対に止めてくれるという、安心感があった。これは、ただの、プレイ、だからだ。  煌也が、目隠しを取り出す。  黒くて長い布だった。それで、頭を巻かれた。何も見えない。見えなくなった途端に、店内の声が、大きくなったような気がした。 (……っん♥ あ……♥ あっ、イイ~っ♥) (……もっと、脚、広げられる?) (皆で見てて上げるからね) (前のお口が寂しそうだね。俺の、しゃぶってみる?) (ほら、奥まで……) (あ……っん♥ もっと、ズボズボしてぇっ♥)  店内では、郁たちに釣られて、プレイが始まっていたようだった。多人数でプレイして居たり、プレイに観客が出ていたりするのだろう。 「郁、手、出して? そ。両手」  何をされるかよく解らなかったが、おとなしく手を出すと、両手首をヒモのようなもので結ばれてしまったのが解った。 「えっ……、煌也……っんん……っ?」  ベッドに寝かせられる。下半身は、丸出しで、上はシャツを着たまま、手を縛られている。 「……あっ……これ……っ」  縛られているから、何が起きるか、探ることも出来ない。 「っ……♥」 「……うん、良い眺め。……じゃ、郁、触って上げるね。まず、郁も脚を広げてみようか」  ぐい、と脚を広げられて、後ろがひくっと動く。そこを、早く、指や性器や、玩具で虐めて欲しい。早く、快楽が欲しいと、身体が強請っているのだ、 (あ……、なに、してくれるんだろう……♥)  期待に、鼓動が早くなるのを、郁は感じていた。

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