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第26話 ここは、秘密のハプニング・バーなんだから

 ベッドに突っ伏したままで、びくびくっと身体が小さく跳ねる。 「は……♥」  荒い息を吐きながら、郁は、後ろに意識が集中していた。  膝を付いて、アナルを高々と上げている。そこから、フサフサした尻尾が生えている。電動プラグについた尻尾だ。プラグは、まだ、ナカで蠢いて、内壁を刺激している。 「あっ♥ あっ♥ あああ♥」  絶頂を迎えたばかりでも、ナカの刺激は止まらない。すぐに、次の波が来る。 「……あっ……♥」 「郁……じゃあ、今度は、店を一周してきてごらん。他のお客さんに、挨拶してね」  床を、四つん這いで這い回ってこいということなのだろうか……?  煌也を見上げると、その通りであることが察せられた。 「……っん……ムリ……っ♥」 「なんで、ムリ……?」 「……だっ……はず……それに……イッ♥ あっ……っ♥」 「時間が掛かっても良いからね、ゆっくりお散歩してきてごらん。……後ろ、落とさないように、注意してね」  煌也は、何が何でも行かせるつもりだ……。  それは解った。 (……行かなきゃ……)  ベッドの端まで行って、そこから床に降りる。カーペットの敷いてある床を、四つん這いになった。途中、ギャラリーの人たちが、郁の身体に手を伸ばしてくる。 「あっ……ん♥」 「郁ちゃん、ビンカン♥」 「ほら、早くお散歩に行っておいで。煌也くんも、待ってるよ」 「俺、一緒にお散歩してあげるよ」  郁の隣をゆっくり歩く男がいる。誰だろうと思ったが、解らない。 「郁ちゃん、ほら、歩きな」  男が、郁の尻を軽く叩いた。 「あ……っ♥」  思わず、声が漏れる。力が抜けて、床に崩れそうになるのを、なんとか堪える。 「あっ……、お尻……、叩いちゃ、ヤ……♥」 「気持ちよさそうなのに」 「……郁は、SMはしないから、その辺で止めてあげてね」  煌也が、さりげなく制止する。 (あ、俺って……SMはしないんだ)  煌也が気に入るプレイ。煌也の好き勝手にされている―――その、被虐的な、被支配的な感覚に、頭の芯が、じりじりと痺れていく。  煌也は、ベッドの所から、郁を見下ろしている。  少しずつ、ゆっくりと、店内の『散歩』を始めると、プレイ中だった人たちも、「郁ちゃん、可愛い尻尾だね」とか「寄り道で、こっちのプレイに混じってく?」とか、声を掛けられる。  やっと、店の隅までたどり着いた時、一人の客が座っていた。 「あっ……ああっ♥ ……っ」  遠隔で、煌也が電動プラグの振動の強さをコントロールしているらしい。  急に、振動が強くなって、郁の腕は身体を支えられなくなってしまう。 「あっ……ん♥ あっ♥ あ……っ♥」  大きく喘ぎながら、郁は、身もだえる。 「郁ちゃん、ほら、起きな。……早く戻らないと。煌也くん待ちくたびれてるよ」  散歩に付き合っていた男が、郁に声を掛ける。 「あれ、君、白バンド? ……見学だったら、こんなところで見ててもつまらないでしょ。……郁ちゃんの、可愛い姿、一緒に見てあげてよ。まず、一緒にお散歩しよう?」 「えっ……、そ、その、僕は……」  とっさに顔を背けた彼は、ずれた眼鏡を手で直した。 「郁ちゃん。郁ちゃんも、見て欲しいよね。あ、君……名前は? ここでの名前でも良いけど」 「えっ……その……明利です、けど……」 「郁ちゃん、明利さんに、おねだりしな」  男に言われて、郁は、顔を上げた。明利、と名乗った男と目が会う。  彼は、少し戸惑ったようだった。 「……っあ……♥ あの、明利……さ……。見学、なら、俺……の、見てください♥」 「えっ……」  明利は、顔を赤らめる。 「……俺……今、パートナー……に命令されて……、後ろ……電動の、プラグ入れて……あっ……ん♥」 「電動プラグ……っ」  驚きながらも、明利の視線は、郁に釘付けだった。 「っ……っ」 「……せっかくだから、見ていきなよ。ここは、秘密のハプニング・バーなんだから……、君も、思うように振る舞わなかったら、損だよ?」  確かにその通りだ―――、と郁は思っていた。  奥をぐちゃぐちゃにされ、沢山の男たちに見られ、命令されて、犬のように、あたりを歩き回る……。  そんなことが、気持ち良いのだ……。 「……んっ♥ あっ……、も、……後ろ……」 「ん? どうしたの?」 「……もっと……、奥が、欲しい……♥」  プラグは、それほど長さがない。だから、一番好きな奥まで到達しない。 「……あっ……、も……抜けそ……」 「郁ちゃん、我慢して。さ、戻ろうか?」 「うん……っ♥ ああっ……っ♥」  身体を起こそうとすると、また、床に突っ伏してしまう。 「あっ……、も……♥ イきた……、おねが……」 「ほら、ベッドまで我慢だよ、勝手にイッたらダメでしょ? 煌也くんに、お願いしないと」 「うんっ……っうんっ……っ♥ あっ……」  なんとか、身体を支えて、郁は、元来たところを戻っていく。  明利は、呆然としていたが、郁についてベッドのほうへ、ふらふらと歩いてきた。  新しいギャラリーが増えたことに、郁は、満足した気分になりながら、ベッドへ上がった……。

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