琉星自身を凝視したまま固まって考えていると、琉星は心配そうに「どうしたんですか？」と尋ねてきた。 　希声は覚悟を決めた。恐る恐る琉星の強張りに手を伸ばし、筒状にした手中に収めた。頭を男の下半身に埋める。我慢汁が沁みた先端に舌先を這わせる。チロッ舐めれば、琉星は「は……」と声を漏らした。 「希声さん無理しないでください……俺、大丈夫ですから」 　何が大丈夫なのか知らないが、希声が口に含んでからというもの、琉星の強張りは希声の口内でより硬さを増した。 　口内の頬で擦りながら、舌全体を使って男の根元から先端まで舐める。ズボズボといやらしい水音が響き、舐めているだけで希声の興奮指数が上昇していく。 　夢中で口内のものを舐めていたそのとき。自身の後孔に冷たい液体らしきものが流れてきた。驚いて陰茎から口を離し、頭を上げる。見上げたすぐ先には、興奮した目で希声を見つめる琉星がいた。 「ここ、準備しなくちゃいけないので……」 　希声の割れ目に先ほどのローションを垂らしたのだろう。琉星は上半身を折り、腕を伸ばして希声の後孔に垂らしたローションを指で掬うと、希声の窄まりを指で撫でた。 「ひゃっ」冷たさとくすぐったさで身が縮む。 「力抜いてください」 　その言葉を合図に、男の指先がつっと小さな蕾に押し込まれた。「あっ……」と口を開けたまま、希声は琉星の太ももに頭ですがった。「痛くないですか？」と気遣ってくれる男に、コクコクと頷くことで応える。 「だいじょう、ぶ……ヘンな、感じがする、だけ……だから」 　そこを使うのは何年ぶりだろうか。自分で慰めたことは何度もあるけれど、人の指に触れられる感触なんてすっかり忘れていた。 　希声が侵入を許してからしばらくの間、琉星は初めて経験する相手にそうするよう丁寧にそこをほぐしていった。忘れていた弱い箇所を琉星の指が掠めたとき、希声は「だめっ」と叫び、目に見えた反応をしてしまった。 「ここが好きなんですか？」 　希声のいい所を発見して嬉しかったのか、琉星は希声が何度だめだと言ってもそこを指の腹で圧迫し続けた。最初は丸々一本を咥えるのもやっとだったそこに指を二本に増やされ、やがて三本目を迎えさせられた。琉星の指によってほぐされて拡げられた秘所が切なく痙攣する。もっと太いものを欲している自分がいる。 「も……挿れ、て……っお願い……」 　翻弄してくる男の屹立を頬いっぱいに口内に収める。希声なりの抵抗だった。自分ばかりが気持ちよくなっている気がして悔しい。相手にも気持ちよくなってほしい。 「希声さん、こっち向いて」 　生理的な涙でぐしょぐしょになった顔を上げる。涙と涎にまみれた唇に、琉星の口づけが降ってくる。「ん……」と絡められた男の舌を味わっていると、いつの間にか仰向けの体勢へと変えさせられた。 　ずっと丸まっていた腰が伸び、普段使っていない筋肉が弛緩していく。琉星は手早くコンドームを自身に装着すると、体重をかけないように希声の上に乗った。ベッドへと押し倒された状態で、後孔に硬くなったものを当てがわれる。 　ようやく欲しかったものが入ってくる。希声は早く早くと、琉星の首に手を回してせがんだ。 　次の瞬間、肉杭が希声の体を割って入ってきた。ググ……と押し入ってきた熱は、希声の体内を圧迫しながら最奥を目指してくる。弱いところを琉星自身にすり潰される感覚に意識が飛びそうになる。 「あっ……んっ、あああっ、くっ！」 　しがみついていないと今すぐ絶頂の果てに連れていかれそうになるほどの快感。足の先から頭のてっぺんまで、全身が琉星のものに塗り替えられているのだと思ったら、ありえないほど興奮した。 　腹の奥まで届いた圧迫感に、息をするのもやっとだった。琉星は希声が自身の大きさに馴染むまで動くつもりはないらしい。血管が浮き出るほどの玉のような汗を額やこめかみに浮かばせ、歯を食いしばって耐えていた。 　男の汗が頬に落ちる。希声は琉星の額の汗を指で拭ってから、「動けよ」とか細い声で訴えた。 「そのままじゃ苦しいだろ……」 「でも希声さんが……っ」 「言わせんなバカ。俺も早くおまえを感じたい、んだよ……っ」 　本音も一緒に言うと、琉星は苦しそうに歪ませる眉を下げた。 「動きますね」 　宣言のあと、琉星の腰がゆっくりと前後に動き出す。それと同時に、希声の体内も快楽を貪る動きを再開させた。 「アッ、ああッ、んあ！　はあっ、ああ、はっ、ンンッ……！」 　中を揺さぶられるたびに嬌声が口の端から飛ぶ。腹側にある弱点を琉星が行き来するたび、眩暈がするほどの刺激が希声を襲った。 「ダメっ、ああっ、あんッ、はッ、あああ！」 　琉星の先端は途中の弱点だけでなく、希声の奥を先端でぐりぐりと圧した。ぐちゃぐちゃに奥をかき混ぜる腰遣いで刺激されると、甘い悦楽に身を焦がした。 　逃げようとすると獣のように押さえつけられ、自分でさえ知らなかった未知の奥を蹂躙される。本当に逃げたいわけじゃない。この快楽を知ってしまったら、自分はこの男から離れられなくなりそうで怖かった。 「イクッ、このままじゃ、俺イッちゃう、から……っ！」 　奥を突かれながら果てる悦びは経験したことがないのだ。琉星から容赦なく与えられる刺激は、やがて小さかった希声の波を少しずつ立たせていく。大きな波へと変わったのは、それからすぐのこと。 「イ、クッ……ふぁ、あっ、っあああああっー！」 　自分では制御できないほどの快楽の波が、希声の腹奥で爆ぜた。電流が全身を駆け巡る。下半身で生まれた感覚は全身を襲い、希声は痙攣させながら絶頂に酔いしれた。 　ほぼ同時に、体内に収められていた琉星自身がひときわ硬く膨れた。「くっ！」と漏らした男の低い声が耳元に落ちる。希声の最奥で琉星も射精したようだ。ビクッ、ビクッと希声の中で痙攣した。 　脱力した男の体を全身で受け止める。汗で湿った体の匂いを嗅ぐと、泣きたくなるほどの愛おしさがこみ上げてくる。 　呼吸を整えながら、顔を見合わせる。琉星のあまりにも幸せそうな笑みに釣られて、希声も思わず目を細めて笑った。