5 / 8

第5話

(思考を読まれた)  読心の魔法 (いつの間に。発動条件は?) 「そうではございません」  闇色の宝玉が小さく笑った。 「私は今《エーデルフリューゲル》以外の魔法を発動しておりません」 (また読まれた!) 「思考をッ」 「お顔に出ていらっしゃいますよ」  ………………え。 「ヒイロ様は素直でお可愛らしいので、全部お顔に出ておいでです」 「……そうなの?」 「はい♪」  にっこり 「後は、そうですね」  むぎゅう〜 「キィヤァー」 「心拍数でしょうか」  ぎゅう〜 「また心拍数が上がりましたね。ヒイロ様の心臓も、とても素直でございます。私に触れられているだけでお可愛らしい。こんなにドキドキと早鐘を打って、一生懸命に拍動していらっしゃるのが伝わって参ります」  フフっと笑った吐息が額を撫でた。 「そそ、そんなのーッ」  仕方ないだろ。  こんな美形の顔が間近にあったら、心臓がもたない。  気絶しそう。 「おや、グッタリなさいましたね。暴れられるよりは良いのですが、もう少し私をぎゅっと、抱きしめてほしいところでございます。できますか?勇者様」  ブンブンブン!  首を振って大否定。 (心臓爆発するから!) 「残念です」  なんで?  伏せた隻眼。  どうして、しょんぼりするんだ?執事さん? 「貴方様の信頼を得られない私は未熟者。勇者様のお側にはべるなどおこがましい」 「そういうつもりじゃ」 「では私を信頼して下さるのですか」 「それは……」  まだ疑いが晴れたわけじゃ……  彼はまだ何も説明していない。  彼がなぜ、宮廷魔導師さえ使えぬ高位魔法を自由自在に操れるのか。  彼が何者なのか。  そもそも、本当に彼はアルファングの使者なのか。 「ヒイロ様」

ともだちにシェアしよう!