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第5話
(思考を読まれた)
読心の魔法
(いつの間に。発動条件は?)
「そうではございません」
闇色の宝玉が小さく笑った。
「私は今《エーデルフリューゲル》以外の魔法を発動しておりません」
(また読まれた!)
「思考をッ」
「お顔に出ていらっしゃいますよ」
………………え。
「ヒイロ様は素直でお可愛らしいので、全部お顔に出ておいでです」
「……そうなの?」
「はい♪」
にっこり
「後は、そうですね」
むぎゅう〜
「キィヤァー」
「心拍数でしょうか」
ぎゅう〜
「また心拍数が上がりましたね。ヒイロ様の心臓も、とても素直でございます。私に触れられているだけでお可愛らしい。こんなにドキドキと早鐘を打って、一生懸命に拍動していらっしゃるのが伝わって参ります」
フフっと笑った吐息が額を撫でた。
「そそ、そんなのーッ」
仕方ないだろ。
こんな美形の顔が間近にあったら、心臓がもたない。
気絶しそう。
「おや、グッタリなさいましたね。暴れられるよりは良いのですが、もう少し私をぎゅっと、抱きしめてほしいところでございます。できますか?勇者様」
ブンブンブン!
首を振って大否定。
(心臓爆発するから!)
「残念です」
なんで?
伏せた隻眼。
どうして、しょんぼりするんだ?執事さん?
「貴方様の信頼を得られない私は未熟者。勇者様のお側にはべるなどおこがましい」
「そういうつもりじゃ」
「では私を信頼して下さるのですか」
「それは……」
まだ疑いが晴れたわけじゃ……
彼はまだ何も説明していない。
彼がなぜ、宮廷魔導師さえ使えぬ高位魔法を自由自在に操れるのか。
彼が何者なのか。
そもそも、本当に彼はアルファングの使者なのか。
「ヒイロ様」
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