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第51話

「国語辞典オープン!」  勇者装備の国語辞典によると…… 「袋とじとは『ペーパーナイフ等で紙を切らないと見られない機密文書である』」 「では開けますよ」  護身用のナイフを素早く取り出すと、華麗な手さばきで、ものの見事に紙と紙を寸断してしまった。  アンティークのソファーに腰掛け、優雅に佇む、ニューンブル伯爵ご令息。  知的な相貌は、ほかの貴族さえ圧倒する気品を漂わせている。  それでいて眼差しは凛々しい。 (こんな高貴なイケメソさんが局部を晒す筈がない)  俺は信じている…… 「ニューンブル伯爵ご令息ユリウス様は、近々家督を継がれて当主となるそうです。今回の婿取りも、ほかの皆様以上に真剣です」  元の世界で言うところの仕事ができるスパダリといったところか。  そんな人が…… (局部は晒さない)  しかし、砦は確かに存在した。  二重にしつらえられた『袋とじ』と呼ばれる最後の砦は、今まさに切り裂かれた。  この中に機密文書 (高貴な貴族のチソコ……) 「どうぞ、ヒイロ様」  かのお見合い写真がゼフィルさんの手から仰々しく、俺の元に差し出された。  貴族のチソコ  そんな物が、俺の手に渡ったお見合い写真の中に存在してはならない…… 「袋とじオープン!」

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