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第58話

 また瞬間移動した☆  否。  彼にとっては普通の移動なのだが。   影の薄さ恐ろしや。 「勇者様。お見合い写真の整理整頓、完了しました」 「こんな短時間に?すごいです。ありがとうございます」  床に散らばったお見合い写真が、取りやすいよう本立てを使って、テーブルにきれいに立てかけられている。 「ついでに袋とじも全部切っておきましたので、後でご覧下さい」 「……あ、ありがとうございます」  貴族のチソコ……見なきゃいけないんだ。うぅ。 「とまあ、影は薄いですが仕事は大いにできますので。私が侍従に人事移動になった時、暫くして引っ張ってきました」  暫くして……なんだ。  たぶんその「暫く」の間、忘れてたんだろうな。影の薄さで。 「という事は……」  えぇっ、もしかして☆ 「諜報員だったんですか?」 「侍従長の補佐をしていました」 「そうだったんですか」  ゼフィルさんは、俺が城を旅立ってから侍従長に就任したから。 「では、初めまして……ですね」 「それが〜」  おや?どうしたんだろう?  言いにくそうに、少し眉をひそめてしまった。 「何でも言って下さい。初対面だからって遠慮しないで下さいね」  俺は勇者だ。  困っている事があれば、力になりたい。

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