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第63話
(侍従さん?)
えっと、名前。
また聞き忘れた☆
って、今はそうじゃない。
「書類、取り返さないと」
「ヒイロ様、どちらへ?」
背後の声に駆け出した足を止めた。
「侍従さんを追うんですよ」
「行く宛てはあるんですか」
「それは……」
どこへ行ったのか皆目見当がつかない。
「だけど、このままだと俺は結婚するか死刑です」
命の危機なのだ。
「しかし、ここは王宮です。よく考えて下さい。この広大な敷地では、追いかけっこもかくれんぼも圧倒的に勇者様が不利です。それに例え見つけたとしても、また見失って振り出しに戻るのが関の山です」
ゼフィルさんの言いたい事は道理だ。
「でも、どうしろと?」
このままじゃ俺には結婚か、死刑かの不条理な二択しかない。
「ですので、よく考えて下さいと申しております。ヒイロ様。あなたがこれからお会いになる御方は誰ですか?」
「アァー!」
そうだ。
その手があった。
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