66 / 172

第66話

「王宮内のどこかに落ちていると思いますので、お気になさらず」 「気にします」 「では正式礼装を転送しますね。着替えましょう」 「……スルーしましたね」 「正式礼装・紫盧遮那装(しるしゃなしょう)」  ほぼ黒に近い装束ではあるが、ほのかに藍色を含む。  この国で「宇宙の色」とされている。  首元に紫のスカーフ。  実物を見るのも初めてだし、もちろん着るのも初めてだ。  特別な装束だと聞いている。  そしてカッコいい! 「とてもよくお似合いです」 「ありがとう」  馬子にも衣装……かもしれないけど。褒められると嬉しい。 「マントはそのままお召し下さい。色合いが素敵です」  夜に散りゆく夕日色の空。  それとも、消えゆく星を儚く思う夜明けだろうか。 「こちらを」  スカーフ留めの繊細な細工がキラリと首元で光った。  ほんとうに明けの明星みたい。 「カッコいい」  自分で言うのも何だけど、ほうっと溜め息が漏れてしまう。 「はい」  隣でにこりとゼフィルさんが微笑んだ。  ……ん?  ところで何だかスースーしない?  着慣れない衣装だからだろうか。 (なんか体がスースー……) 「ギャアァアー!」 「どうしましたか、ヒイロ様」 「なんでっ?」  どうして俺は…… 「パンイチなんだァァァーッ!」

ともだちにシェアしよう!