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第74話

 涼やかでいて荘厳な鐘の音が、静寂の広間に響き渡る。  カラン、カラン、カラン 「国王陛下、ご入室!」  鐘の余韻を残して、広間に声が高らかに響く。  カッ  居並ぶ騎士の靴音が鳴った。  長槍を者に構え、敬礼姿勢を取る。  空気が変わった。 (入ってきたんだ)  ひれ伏したままでも分かる。  一瞬、ひんやりと冷たい空気が流れた。けれども、それは嫌な感じじゃなくて…… 「勇者ヒイロ。表を上げなさい」  威厳ある音色。しかし、透き通った不思議な重みのある声だ。 「はい」  声の主に応えて、玉座を見上げた。  アルファング王国  国王陛下  その素顔はベールに包まれている。  仮面を被り、漆黒の紗をまとう。  『シュヴァルツ』と……  王国騎士団長の称号が『黒』である所以である。  国家最高権威を守る剣がシュヴァルツ  『黒』は国王の象徴である。

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