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第111話

 はぐらかされた気がした。  魔王討伐を果たした事で、魔物との戦争は終わった。各地の魔物の動きも今は鎮静化している。  しかし、次の魔王が再び現れるのなら。  上位魔族に魔王となる候補がいるのなら。  上位魔族を、次に……  戦いは二手三手先を読むものだと、かつてシュヴァルツが言っていた。  先手を取った方が有利だとも。 (けれど、それでは)  上位魔族を討った後は?  魔族、そして魔物……  戦いは終わらない。世界の全魔物を殲滅するまで。 「……ヒイロ」  ぽむ  頭の上、あたたかな感触がある。  手袋越しなのに、あたたかいと確かに感じた。 「私のやる事が心配かい?」 「はい」  頷いた。  たった一度、首を振ったその返事が一国の統治者へ異を唱える反抗である、と……  分かっていて。  それでも俺は頷いていた。 「ヒイロは優しいね」  答えであって、答えでない。 (答えであって、答えでないのに...…)  優しい、と思ってしまった。  この人は優しいのだと。不思議と……  敢えて言うなら、勇者の勘かな?  あなたは嘘をつかないから。 (ついてもいいタイミングなのに)  どうして嘘をつかなかったのだろう。 「覚悟の重さですか?」 「君に嫌われたくないからさ」

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