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第126話
訪れた静寂をかき破るかのように、荘厳な扉はゆっくりと開かれた。
地響きを打ち鳴らして、扉が泣いているようだ。
カッ
一糸乱れぬ隊列で、近衛騎士団が靴の踵を床に打ち付けた。
ザッ
振りかざしたお兄様の右手を合図に、近衛騎士達が通路を挟んで互いの正面に向き直る。
声はない。
たったその行為だけで、ものすごい威圧が生まれる。
喉が痛い。唾の一滴さえ飲み込めぬ異様な緊張が、この空間を覆っている。
俺は、お兄様の後ろに控えている。
ここから……お兄様が床に引いたラインから前に出てはいけないとの指示がある以上、動けない。
お兄様を信じるしかない。
かざした右手をお兄様が振り下ろした。
ギァツン
槍の柄が一斉に床に打ち付けられた。
来訪者のために開かれた道を、一歩また一歩、男が歩む。
フードに隠れて容貌は見えない。
相国……
ガルディンの国を取り仕切る、実質のナンバー1
若き彗星の如き男なのか、権謀術数を駆使する老獪なる政治家なのか。
分かるのは、極めて長身であるという事。
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