168 / 172

第168話

 相国が羽ばたく。  風と風がぶつかり、青い火花が散る。  互いに譲らない。両者中央で膨張した気圧が消滅。  暴風の刃は相国に届く前に霧散した。  が…… 「肝を冷やしただろう」 「羽虫の起こす風など、我が前では涼風に過ぎんが?」  風圧は届かなかった。だが、 「哺乳類の弱点その1 気道を潰す」 「涼風がか?」 「哺乳類であれば、気道を潰せば死ぬ。お前の強さの限界だ。哺乳類の弱点は、そのままお前の弱点になる。哺乳類の弱点をつけば、お前を殺せる」 「だから?」 「こうする!」 (まただ!)  リッツの剣筋が見えない。  しかし風は吹いた。喉笛に向かって、鋭く。  違うッ、そうじゃない。  風が……止んでしまった……  ひらりと舞った、ひとひらの羽 「大口を叩く」  指に挟んだ羽一枚で、風を消失させた。 「黙れと言った。哺乳類」  剣先が相国をとらえた。  至近距離での剣圧。 「よけられまい」 「よける必要はない」  たった一枚の風のひらめきがリッツを吹き飛ばした。  だけじゃない! (剣がッ)  リッツの長剣が粉々に消し飛んだ。  しかし。 「黙れと言った。忠告を聞かなかったお前が悪い」  リッツの剣  粉々に、それが更に粉々に割れた。 「哺乳類である以上、粘膜は鍛えられない」  風が再び吹いた。

ともだちにシェアしよう!