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第2話 愛しい人の寝顔を見ながら

 離れは二人で住むには大きい。  でも、星占術の道具の収集癖のある俺にとってはちょうどいい広さだ。 「ただいま」  小声で帰宅を告げ、そのまま台所に直行する。  貰ったばかりのブリを手早く捌き、薬味として紫蘇を刻む。  それが終わると、大根とその葉っぱで味噌汁を作り、その横で米を炊く。    あとは待つだけだ。  俺は台所の壁に貼っている札に霊力を通した。  すると、ポンッと小気味の良い音と共に、二足歩行の猫又が現れた。  この猫又はゆき。  俺の式神だ。  真っ白でふわふわの毛並みで、雪が降ると見つけられなくなりそうなのが名前の由来だ。 「ゆき、お米が炊けるまでよろしくね」 「んにゃ!」  力強く頷いたゆきは、竈門の前に陣取った。  揺らめく炎をじいっと見つめ、二本の尻尾を揺らしている。  それを確認すると、俺はそろそろと奥へと引っ込んだ。  午後の柔らかな陽の光が、開いた扉の隙間から寝室の中に差し込んだ。  真ん中には畳が敷いてあって、その上には男がぴくりとも動かず健やかな寝息を立てている。  彼は俺の大好きな、愛する人。  後ろ手にそっと扉を閉めると、彼――一之助――の寝顔がうっすらと見えるくらいの暗さになる。  その額の左側。  肩まで伸びた銀の髪との境には、白くてつるりと鋭く光る角が一本生えている。  濃ゆくて太めの眉毛は寝ていても凛々しい。  今は閉じられていてよくわからないけれど、目は大きめで、それでいて可愛さよりも力強さを感じる。  その左の瞳は赤く、本当なら白い部分は黒く反転している。  俺はその左右で違う目に見詰められるのが好きだ。  はぁ、眼福……。    そろりそろりと足音を忍ばせると、俺は|衾《ふすま》を蹴ったくり、大の字で寝ている一之助の足の間に陣取った。  大の字で寝ているから、単が開《はだ》けて腰から下が丸見え。  股の間で寒さに縮こまっている一之助の魔羅は、それでも俺の手のひらよりも大きい。  ごくり、と喉がなる。  俺は胸元から洗浄の二枚取り出し、右手の人差し指と中指で挟んで剣印を結ぶ。  ほんの少し霊力を込めると、ぼぅ、と仄かに橙に光り、俺と一之助の体を包み込んで弾けた。  これで体が清められた。  外も、中も……ね。  衣擦れの音が出ないように慎重に単を脱いて全裸になると、護符と一緒に持ってきていた器の中身に指を浸した。  中身は椿油だ。    たっぷりと指に絡めると、濡れた指先を後ろに回して菊門に塗りつける。  皺の一本一本を撫で、少し肌を押す。  すると、これから訪れる快感を期待してひくついた。  ああ、恥ずかしい。  はしたなく反応するそこにゆっくりと指を沈めていく。  中は自分でもびっくりするほど熱くて、冷たい指先に驚いたそこはきゅうっと縮こまった。  でも、固くなってしまったからといって性急に動かしてはいけない。  焦りは禁物だ。  少しずつ力が抜けていくのを感じると、俺はゆっくりと指を抜き差ししたり、繊細な柔壁を揉んだりして解していく。 「一之助、ごめんね」  それと同時に、無防備に晒されている一之助の魔羅に手を伸ばす。  触れると熱した鉄のように熱く、その質量はずっしりと重い。  その下にぶら下がったふぐりも魔羅に合わせたように大きくて、自分のと比べるとちょっと悔しくなる。  羨ましいけれど、それよりも期待の方が大きい。  格好良くて、美味しそう。  元から皮の剥けた魔羅をそっと上下に扱くと手の中で跳ね、ムクムクと固く勃ち上がる。  質量が増したそれは赤黒く充血し、幾筋も走る血管が浮いていた。  ふっ……と吐息が耳に届いた。  心臓がバクバクと跳ね、嫌な汗が吹き出す。  そろそろと顔を上げて一之助の顔を確認すると、さっき見たままの寝顔をしていた。 「っごめん……」  小さくぽつりと謝るけれど、逞しい魔羅を扱く手は止めない。  やがて先端にある小さな穴からじわりじわりと透明な液が湧いてきた。  もったいない。  俺は躊躇いもせず赤くつるりとした切先に舌を這わせた。  口いっぱいに一之助の味が広がる。  苦いのに、美味しい。  手で激しく扱きながら次から次に溢れ出す淫液を舌で舐め取ると、その度にピクッピクッと反応する。  凶悪な見た目だけど、健気に気持ち良いと答えてくれて可愛いと思ってしまう。  これがいつも俺の中をゴリゴリと抉って、奥を穿って気持ち良くしてくれる……。  愛しくて愛しくて、俺は大きな口を開けてそれを咥えた。  太くて長い一之助の魔羅は半分くらいしか口に入らない。  だから根元まではこれまでと変わらず手で扱き、口に含んだ先端側は唇で奉仕していく。 「んっ……ふ、ん、んぅ……」  吸い付きながら唇を窄めて扱くと先走りと唾液が混ざり合う。  それに合わせて尻に入れた指の動きを激しくすると、二箇所からジュポジュポグチュグチュと卑猥な音がする。  まるで繋がっていると錯覚してしまうような耳からの刺激に頭がクラクラする。  けれど、それは妙に大きく感じて、俺の恥知らずな行いが一之助にバレてしまうのではないかという恐怖と、それとは違う興奮と、罪悪感がごちゃ混ぜになって胸が張り詰めた。  こんなの間違っている。  わかっているけれど、もう止められない。

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