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第3話 いけないことなのに
強く吸い付きながら頭を動かすと、口の中の一之助が一際固くなった。
俺は口の端から垂れてくる唾液と先走りが混じった粘液を手に絡め、ぎゅっと力を込めてさらに激しく手を動かす。
すると、幾ばくもしないうちに喉奥に一之助の白濁が叩きつけられた。
「ん、ンッ……ぅぶッ、ふ……!」
咽せ返るような雄の匂いが鼻に突き抜け、ドロリと粘土の濃ゆい精が口内を支配する。
ゴク、ゴクッと二回に分けて飲み干すと、まだ尿道に残っているものも吸って胃の中に収めていく。
苦いのに、甘く美味しく感じるのはなんでなんだろう。
いつも不思議だ。
ちゅぽんと魔羅から口を離す。
達したというのに一之助のは勃ち上がったまま、足りないとばかりに跳ねている。
俺は後ろを解していた指を引き抜き、そろりと一之助に跨った。
左手を後ろに回して一之助の足の間に手を着き、早く早くと俺を急かす魔羅を右手で掴む。
熱い陽根を後孔に宛てがうと、胸がギュウッと苦しくなった。
「ごめん、ごめんね……」
形だけの謝罪は意味がないのに、それでも言わずにはいられない。
言葉が散ったのを合図に腰を落とす。
グチュ、チュ……と水音を立てて一之助の魔羅を飲み込んでいくと、俺の中は待っていたとばかりに熱くて固いそれに吸い付いた。
「は、あ、あ……んッふ、ぅ……ぅ、ん」
中を押し広げられ、圧迫感に苛まれる。
苦しくて仕方がないのに、それさえも気持ちが良い。
俺は半開きになっていた口を右手で塞いだ。
それでも、止められない鼻にかかった嬌声は手と口の隙間から零れ落ちていく。
どうしよう、一之助が起きちゃう……!
慌てて左手を右手に重ねて口に押し付ける。
体の支えがなくなったけれど、足と腰に力を入れて踏ん張った。
咄嗟に反応できたけれど、そうじゃなかった時のことを考えると体がぶるりと震える。
ちょっと残念だったのは気のせいだ。
俺は本懐を遂げるため、両足で体を支えて腰を落としていく。
腹側にあるどうしようもなく感じるところに当たらないように角度を調整し、奥の壁を突かないように、慎重に。
奥ギリギリのところまで入ったところで一度休憩。
俺の中と一之助の魔羅を馴染ませ、乱れた呼吸を整える。
一之助は相変わらずピクリとも動かない。
よし、大丈夫そう。
声が漏れないように唇を噛み締めると口を押さえていた手を離し、体のやや後ろ側の畳に手を着いた。
そして、ゆるゆると腰を動かし始める。
最初はゆっくりと一之助のものを撫でるように。
徐々に動きを早くして、尻に力を入れて力強く。
中にたっぷり仕込んだ椿油と、俺の腸液と、一之助の先走りが混ざり合い、グチャ、プチュ、と淫靡な音が耳を犯す。
指で解していた時から緩く勃っていた俺の陽根は、この背徳な光景に硬度を増していた。
腰を動かす度に跳ね、鈴口から滲み出た先走りを撒き散らす。
この行為に俺の快感なんてどうでもいい。
なのに、一之助に開発された体は貪欲に気持ち良さを追いかける。
なんて浅ましくて情けないんだろう。
視界が潤む。
涙が溢れないように顔を上げてようとした時、一之助の顔に視線が釘付けになった。
頬が僅かに赤くなり、少しだけ眉が寄せられている。
半開きになった口からは、俺の腰の動きに合わせてふっふっと吐息が漏れている。
どうしよう。
今、一之助の唇に吸い付きたい。
でも、そんなことをしたら一之助は確実に起きてしまう。
俺は左手を畳から離し、口元に持っていく。
一之助との口付けを思い出しながら指で唇をゆっくりなぞると、胎の奥がキュンと疼いた。
そろりと舌を突き出し、指先を舐めて唾液を絡め、それが垂れる前に口内に指を招き入れる。
指で舌を撫でたり、挟んだり。
手のひらを返して上の歯列の裏を擽ったり。
でも、一之助との口付けほど気持ち良くない。
もどかしくて切なくて、人差し指と中指に加え薬指も口内に突っ込んだ。
「あ、んむッ……ん、ぅん……ふ、ぅ……」
陰部と同じくらい激しく指を動かしているのに、拾える快感は小指の爪の先くらい。
なんで、どうして?
何が違うのか、わからない。
躍起になって腰も指も激しく動かしていると、一之助の腹筋が小刻みに痙攣し始めた。
俺は我に返り、一際強く尻に力を込めて腰を動かす。
それから十を数えた頃、一之助の熱くて濃ゆい子種が俺の胎に吐き出された。
ゆるゆると動いて残滓を搾り取り、ゆっくりと腰を上げる。
ブチュ、と音を立てて現れたのは、卑猥に濡れている一之助の魔羅。
二回も吐精したというのに、まだ元気だ。
あとで鎮めてあげるから、それまで待っていてな。
俺は畳に用意していた護符を手に取ると、始めた時と同じように剣印を結んで霊力を込めて体を清める。
これで全ての証拠は隠滅された。
未だ勃ち上がっている俺と一之助の魔羅を除いては、だけどな。
苦い思いでそれを眺めつつ、身なりを整え始めた。
寒さを思い出した体はぶるりと震える。
俺は後片付けをしながら、一之助との出会いを思い出した。
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