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第8話 バレちゃった!
その日、俺はいつものように一之助の上で腰を振っていた。
腹側のしこりと奥の壁に当たらないように、慎重に角度を調節しながら、一之助が達するように。
俺が後ろで飲み込める限界まで中に入れ、抜ける直前まで腰を上げる。
一之助の魔羅は長いため、そうすると両脚が結構辛い。
でも、開発された俺の中はそれだけで快感を拾う。
違うっ違う……!
今、俺の気持ち良さは必要ない。
こんな酷いことをして気持ち良くなるなんて、俺はなんてはしたないんだ。
でも、俺は腰を止められなかった。
一之助を高みに導いて、早くこんなこと終わらせなければ。
より一層尻にきゅっと力を入れ、位置の調整で右足をずらした時だ。
足元にあった器を蹴ってしまい、中に入っていた椿油が溢れてしまった。
それに濡れた右足はぬめり、畳の筋に沿って滑っていく。
「あっ……⁉︎」
まずいと思った瞬間には、一之助の魔羅が腹側にある俺のどうしようもなく感じるところを強く擦りながら、一気に奥まで入ってきた。
「ン゛ぁあああ~~~~⁉︎」
強い刺激に耐えられず、触ってもいなかったのに勃ち上がっていた俺の陽物から白濁が飛び散る。
勢いよく噴き出したそれは一之助の腹にパタタッと落ちた。
けれど、俺にそれを気にする余裕はない。
視界がチカチカと明滅し、全身を駆け巡る稲妻を堪えるのに精一杯。
全身を支配する熱が擦り切れた理性も溶かし、思考までなくしていく。
気持ちいい。
この奥を一之助に突かれて、捏ねられて、その奥まで穿ってほしい。
一之助を全部飲み込んで、一之助にも気持ちよくなってほしい。
畳についていた手を綺麗に筋肉がついて割れてる一之助の腹に移した。
はっはっ……と息を整えながらゆるゆると視線を上げる。
と、愕然としながらも、目の奥が鋭く光る一之助と目が合った。
あッ……ああ……!
どうしよう!
バレてしまった……!
「さ、きち……?」
「えっ……いっいちのすけ、あっこれ……あっあの、ちがッ……!」
「何が?」
優しく問いかけながら、でも、一之助の大きな手は俺の腰を掴んだ。
腕の力だけで俺を持ち上げ、また落とすと同時に自分の腰を突き上げる。
俺が寝ている一之助の上で腰を振っていた時とは違う容赦ない上下運動。
達したばかりの俺には強すぎる刺激だ。
一之助の腹についていた手は徐々に力が抜け、むっちりとした胸までずるずると滑っていく。
俺の上半身は一之助に乗り上げ、逞しいその胸筋にみっともなく縋り付いた。
「あっあっ待って、いちのすけッ止まって……!」
「止まるよ? 何が違うのか教えてくれたら、ね」
そう言うくせに、一之助は激しい快感の嵐から逃してはくれない。
腹の力で起き上がると、俺の後頭部と腰の後ろに手を滑らせた。
腰の動きはそのまま、後頭部で結っていた髪を解かれる。
ぱさりと背中に落ちた髪に指が通されると、頭がゾワリと粟立つ。
首を竦め、角張った肩に顔を埋めようとした。
でも、一之助が俺の後頭部を包み込んで上を向かせたことにより阻止された。
近づいてくる一之助の顔。
あ、と思う頃には、唇を大きなそれで塞がれていた。
「んっ……ふ、ぁ、ぅんッン……ぉ、あ……」
「はっ……佐吉……」
厚くて長い舌が上顎を撫でながら喉奥に滑る。
ゆっくりと手前に引き抜かれたそれは、次に舌にしゅるりと絡みついた。
一之助のものに比べて小さい俺の舌が擦れて気持ちがいい。
息も出来ないくらいの口付け。
口の端から溢れた唾液は顎を伝い、胸から腹にまで落ちていく。
駄目だ。
息が苦しいのに気持ちいい。
クラクラ、チカチカする。
これじゃ一之助にちゃんと説明できない。
「ン、ぁ……いちのッん、んぁ、ぅ、ふ……」
「ん?」
背中に回した手で一之助を叩き、止まってとお願いする。
でも、一之助は鼻で返事をするだけ。
それどころか、今度は俺を畳に押し倒してきた。
背中に回っていた手がゆっくりと引き抜かれ、今度は俺の左足が肩に担がれる。
俺は手を伸ばして一之助の腹を押して離れようとした。
「だめッそれ、は……ぁああ⁉︎」
「なんで? これ、好きでしょ?」
一之助は俺が伸ばした手を取り、指を絡めて畳に押さえつけ、欲が溢れ出した瞳を光らせた。
流れるように体を横に転がされた俺は大きく縦に足を開いた状態で一気に腰をぶつけられ、湿った音と乾いた音が混じり合ったいやらしい音に耳を犯される。
容赦なく奥を突かれ、腹の奥から熱が膨れ上がり、目の前が明滅した。
「おッ、奥……だめ、きもちッ……!」
「奥、気持ちいいね」
「ひぁッああ……ッだめ、奥ッ……イチ、イチぃ!」
「は、ぁっ……佐吉……」
俺、何を言いたかったんだっけ?
思考は砕け散り、寝室を飛び出していく。
今はただ、体を巡る快感を享受し、一之助とその愉悦を共有する。
と、突然奥の壁が綻び、グポッとその奥に一之助が勢いよく突き入れられた。
「ひぁあああああ⁉︎」
「ああ……ぜんぶ、入ったよ」
「ぅあ、あ、ひッぁ……!」
「ふっ……可愛い、ね……」
最早、意味のある言葉は紡げなかった。
揺さぶられるたびに口の端から母音と唾液を垂れ流す。
きっとみっともない顔をしているのに、一之助は可愛い可愛いと繰り返す。
揺れる視界の端に捉えるのは、蜜飴みたいにとろりと甘く溶けている一之助の顔。
慈愛に満ちていてるのに、獰猛さも兼ね備えたそれは俺の体を益々熱くする。
「ごめん。夜、ちゃんと満足させれなかったんだよね。きついかなって思って抑えてたんだけど、佐吉も足りなかったんだ」
「ちッ……ちがっ……そっじゃ、なくてぇ……!」
「なんで? 宿直明けの日、毎回こうして俺のこと襲ってたじゃん」
「そっ……な、気付いて⁉︎」
「いいや。でもごめんね、カマかけちゃった。……で? そうだったの?」
「ごめッ……ごめんなさいぃ……」
全身が熱くて汗が吹き出す。
乾いた音は湿り気を帯び、繋いだ手も合わせているのが苦労するくらいだ。
視界が少し翳り、一之助が体を倒して俺に覆い被さってきたのに気付いた。
合わさった湿った肌は互いに吸い付くようで気持ちいい。
顔を向けると、また唇を食べられた。
「んむッ……ん、んッぁ、ふ……!」
深くなる口付けに合わせて一之助の腰が一段と動きを激しくなる。
俺の奥の奥まで穿つ一之助の魔羅は全部中に入り、水音に合わせて肌がぶつかる乾いた音も寝室に響く。
駄目だ、息が続かない。
飲み込みきれなかった二人分の唾液が口の端から溢れる。
激しい快感に揉まれながら、頭がジン……と痺れて白む。
霞む視界の先には情欲にギラついた一之助の雄臭い顔。
あ、やばい……格好いい。
「ん……あ、ぅんんんんん!」
「ッく、ぅ……!」
稲妻のような激しい快感の衝撃に体が跳ね、それを一之助に抱きすくめられる。
嬌声は飲み込まれ、俺は落ちる感覚から一之助にギュッとしがみつく。
肌を焼くような快感が引いたころ、俺たちはようやく唇を解いた。
「で? 何が違うって?」
「い、今……? それはアレだよ、アレ……」
「アレ?」
一之助はゆっくりと自身を俺の中から引き抜き、横になったついでに逞しく筋肉が隆起した腕を俺の頭の下に差し入れ、優しく、けれどどこか意地悪く聞いてきた。
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