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第07話 逃げ場がない

【1】 体内に埋め込まれたシリコンの器具が耐えず前立腺を刺激して慶志郎を責め苛み、声を漏らすまいと必死に唇を噛み締める。 時刻は夜の20時を回っていた。 「頑張るじゃねぇか、大したモンだな」 例の器具を尻に挿れられた慶志郎は部屋の備え付けの一人がけのソファに座らされていた。 サイドの肘掛けにそれぞれの足を引っかけられると、自分の意思では閉じられない。 両手首はソファの背に回され、浴衣の腰紐で括られている。 そんな慶志郎を正面の同じ一人がけのソファに座り、頬杖を突いて金剛が眺めていた。 慶志郎の中に入っているシリコン製の性具は中心に芯が通っていて自由に角度を変えられる物で、金剛はその先端に少しカーブを付けてから挿入してきた。 挿れられて初めてカーブを付けた意味が分かる。 絶えず先端部分がいわゆる『悦いトコロ』を刺激するのだ。 両脚を広げた不安定な格好で座らされている為、呼吸する度に腹に力が入り中の物を締め付けてしまう。 締め付けるとビーズが予想できない動きをして内壁を抉る。 「んっ、く、ぅ……」 慶志郎の顔が赤いのは微熱が残っているせいだけではない。 否応なしに性感を刺激され、己の痴態を見られている羞恥も混じっている。 またゴリッとビーズが蠢き、反射的にビクンと全身が跳ねた。 広げた足がガクガクと震える。 勃ち上がっている陰茎はひっきりなしに透明な体液を溢れさせてはいるが、一度も達してはいない。 というか、触れずに達する術を知らない体はイケないのだ。 「ぎ、……ッ、……!……!」 仰け反りながら意地でも声は上げない。 はーっ、はーっ、と大きく荒く息を吐いて刺激をやり過ごす。 そうすると幾分かラクだった。 全身は汗で濡れ真っ赤な顔で震えながら、それでも慶志郎は耐えた。ここで折れたらダメだ。 負けたら後は坂道を転がるように快楽に押し潰される。 その時に自分がどうなってしまうか、想像もつかない。 「アンタ、いい加減イキてぇんじゃねえか?」 「……っ、は!冗談も、休み休み、言え……!」 「根性あるっつうか、強情っつうか」 ギリギリと歯軋りが聞こえそうな程に睨みつける慶志郎に、呆れたんだか感心したんだか分からない口調で言うと金剛は立ち上がって近づいて来た。 その大きな体躯のせいで正面に立たれると威圧感が増す。 片膝を付いて金剛は目線を慶志郎に合わせた。 「まあ、アンタの泣きっ面は見てて飽きねえな」 手を伸ばし最早、着衣の役目を果たしていない浴衣を肌蹴ける。汗ばむ胸を大きな掌が撫で回し、少し硬さをもった乳首を指が弾く。 「ココ、昨日ちょっと弄ったくれえじゃ、まだ無理だよなァ」 「な、にが……」 「ん?ココでイケるようになるか、と思ってよ。開発すんにゃ、まだ時間かかりそうか」 平然と言いながら金剛はキュ、と乳首を摘まんだ。 「思い出せよ。昨日、コレ弄られて気持ち悦かったろ?」 人の記憶は強烈な印象があるほど、その時に体験した感覚も明確に思い出してしまう。 金剛の言葉に昨夜、散々舐め回され赤くなるまで乳首を弄り倒された記憶と感触が鮮明に蘇り、呼応するように慶志郎の胸はズキズキと疼き始めた。 当然それを目の前の男が見逃すはずがない。 物覚えが良すぎるってのも大変だなあ、と小馬鹿にしたように笑われ慶志郎は羞恥と怒りで男を睨み付けたが、意に介さず顔を寄せると金剛は硬くなった乳首に舌を這わせた。 肉厚の舌が器用に乳首を弾き舐め転がし、じゅうっと吸い上げる。 「はっ、ん……んん、っ」 逃げようにも腰を引くと中のビーズが腸壁を擦り、動きを制限してくる。もう片方の乳首は指でぐりぐりと押し込まれ、きつく摘ままれては弾かれる。 勃ち上がった陰茎がビクビクと震え限界を訴える。 慶志郎はプライドだけで体の限界を押さえ込んでいた。 イカせて貰えば楽になるとは分かっていても、この男の言いなりになるのだけは絶対に嫌だった。 目に溜まった涙が頬を伝い、噛み締めた唇から血が滲んだ。 金剛は唇を離し、慶志郎の顎を掴んで上向かせた。 快楽に蕩けても目の光だけは失われず、今にも殴り掛かりそうな程に怒りを湛えているその姿が単純に綺麗だと思う。 汗に濡れて首筋に貼り付く髪を掻き上げ、ぬろりと舐める。 嫌がって顔を逸らすのも構わず、紅潮した肌に歯を立てた。 喰い破られるとでも思ったのか、わずかに怯えを見せる慶志郎の首に噛りついたまま低く嗤う。 「んなにビビんなって、取って喰いやしねぇよ」 別の意味で喰っちまったけどな。 慶志郎の中に挿入っている性具のリングに指を引っ掛け、軽く引くと入口がヒクつく。 「ちっと頑張って腹に力入れたら、コレ抜けるかもな」 「……いいか、ら、抜けッ!」 「自分でやれよ、係長」 「ッ、クズ……!」 「クズで上等」 罵倒もこの男には通じない。 虚無に沈む真っ黒な目が歪に嗤っているだけだ。 【2】 短く息を吐き、慶志郎は下腹に力を込めた。 ぬる、と中のビーズが出て行きながら腸壁を擦っていく。 「ん、く、く、」 「ほら頑張れよ、あとも少しだ」 再び正面のソファに座った金剛がその様子を眺め揶揄する。 「黙、れ、あァッ!」 カッとなって言い返した瞬間、腹に込めた力が緩み半分ほど出かかっていたビーズが中に戻って行った。 さっきからずっと、出そうとしては戻るの繰り返しだ。 「アンタ、出してぇんだか楽しみてぇんだか分かんねえな」 「……はっ、く、うるさ、い……!」 悪態をつくがすでに限界を越えていた。 楽になりたいと気持ちが傾くが、この男の思い通りになりたくないと相反する感情がせめぎ合う。 慶志郎を支えているのは、細い一本の意識のみだった。 生理的な涙を零しゼイゼイと息をつく。 「まあいい、ここまで頑張った係長にご褒美な」 金剛は立ち上がって近付き、慶志郎の前に屈むと今にも弾けそうな程に震える陰茎を握り込んだ。 濡れそぼった先端の穴を乾いた指でくじかれると、堪らない程の快感が走る。もう片方の手はビーズのリングに引っ掛かり、クイクイと軽く引っ張られた。 「どうせなら、いっぺんに終わらせた方が楽だろ?」 「止めろ、触るなっ!」 「限界なんだろ、我慢はよくねえぜ」 ぬるぬると陰茎を扱かれる。 金剛の意図する事が分かり、慶志郎は首を横に振った。 今それをされたら、もう耐え切れない。 金剛が性具をゆっくりと引き抜いていくが、少し出した所でまた戻す。カーブの付いた先端が性感を擦る。 「ぐっ、ぁ、あっ」 今度は左右に捏ね回しながら出し挿れされる。 ビクビクと内股が痙攣して震える。 背を逸らし声を漏らす慶志郎の痴態に金剛がニタリと嗤った。 「じゃあ、遠慮なくイケよ」 ずるっと勢い良くビーズが引き抜かれた。 散々に嬲られ、熱く熟れた内壁を無機質の器具がゴツゴツと抉り擦って出て行く。 同時に陰茎も力強く扱かれる。 「ーーーッ、ーーー!」 声すら出せなかった。 我慢に我慢を重ね、ようやく解放されたソコから迸った精液は首元まで飛んだ。意識が真っ白に飛ぶほどの快感が全身を突き抜け、ガクガクと腰が踊った。 多分、一瞬だけ本当に意識が飛んだらしく、軽く頬を叩かれて慶志郎は焦点の合わない目を男に戻す。 両目からボロボロと涙が零れていた。 「泣くほど気持ち悦かったか?」 「ひ、ぅ…、ふ、」 こちらの問いかけに訳も分からず頷く慶志郎を見て、金剛は己の唇を舐めた。 プライドの高い男が屈する姿は想像以上に情欲を煽った。 慶志郎の体液で濡れた手で胸を撫でると、それだけで感じるのか肩をビクつかせて喘ぐ。 一度達した事で性感が格段に上がったらしく、どこを触るだけでも慶志郎は抑えられず、艶めいた声で啼いた。 ソファを後ろに抱えるように回していた両手を外し、広げていた足を下ろしてやるも長時間、無理な体勢を取らされていた為か自力で立てないらしく、そのまま金剛の方に倒れ込んでくる。 「鏡」 名を呼ぶとノロノロと慶志郎が顔を上げ、段々と目に光が戻ってくる。唇が動いて何か呟いた。 「??」 唇の動きを読み取る。 『下衆め、地獄に、堕ちろ』 ポカンとした後、金剛の口元が歪んだ。 ここまでされても、この男のプライドは砕けない。 ははは、と知らず笑い声が上がる。 腹の底から楽しかった。 地獄に堕ちろって?上等。 堕ちてやろうじゃないか。 そん時はテメエも一緒だ。 慶志郎を肩に担ぎ上げると金剛はベッドに放り投げ、倒れ込む体を引っ繰り返し腰を高く掲げる。 性具を咥え込んでいたソコに触れると拒むように窄まり、まるで恥じらう処女のようなのに、指を挿れると放すまいと貪欲に食い締めてくる。 ローションのおかげで滑りは良く、一気に二本の指を突き挿れても、痛がる様子は見せなかった。 「あッ、あ、あ、ひう、ぅ!」 上がる声はもう止められないらしく、ぬぐぬぐと指を出し挿れする度に慶志郎が泣き喘ぐ。 長い金髪が背中で乱れ波打つ。 髪を払い、体を落として背筋に舌を這わせる。 彼は背中も性感帯のようで、昨夜も弄った時にずいぶんと好い反応を見せていた。 逃げようとする体を引き摺り戻し、膝をつかせるとそれぞれの脹ら脛を己の膝で抑え込んだ。 こうすれば彼は自ら腰を落とせない。 金剛も着衣を脱ぎ捨て、硬く勃ち上がった己の陰茎を慶志郎の後孔に押し当てた。 彼の痴態に煽られ先走りを滲ませる剛直が、柔らかく物欲しげにヒクつく後孔をズブズブと割り開いていく。 「ヒッ、あ、あ゛あ゛アァーッ!」 腕で体を支えられず上半身は崩れ落ち、腰だけを高く上げた状態でシーツをきつく握り締めて慶志郎が絶叫する。 勃ち上がった陰茎からパタパタと白濁混じりの体液が溢れる。 挿れただけで軽い絶頂に達したのか、肉壺と化したナカが蠢いて金剛のモノを包み込む。 その感触には、さすがの金剛も熱い吐息を吐いた。 挿れただけで持っていかれそうになるなんて滅多にない。 「すげぇな、アンタのココ」 「あ、あぁ……や、め……」 半分ほど、ゆるゆると引き抜いて尻を割る。 慶志郎のナカは出て行く肉塊を名残惜しげに食い締める。 こりゃあ、二回目から本番だな。 舌舐めずりをして金剛は勢い良く腰を叩き付けた。 【3】 生身の体温を持った肉塊が鼓動を打ちながら、体を割り開いていく。ドクドクと脈打つソレはさっきの無機質な物と違い、明確な意図を持って慶志郎の敏感な部分を的確に突き、絶頂へと押し上げる。 解放を待ち望んでいたソコは慶志郎の意思に関係なく、嬉々として男のモノを咥え込む。 止めてくれと叫んでも、男は懇願を無視して後ろから凄まじい勢いで腰を叩き付けてくる。 半端に弄られた両乳首がきつく摘ままれ引っ張られ、ぐりぐりと捏ね回される。 指で弾かれるとビリビリと快感が突き抜ける。 勃ち上がった陰茎がシーツに擦られ、その刺激が悦くて無意識に腰を押し付けて快楽を貪る。 結合部から響く厭らしい音が耳を犯す。 ひと突き毎に絶頂の波に飲み込まれる。 「……おい、アンタ。俺がイクまでに何回漏らすんだよ」 くくく、と男が嗤う。 だらしねえモンはお仕置きしなきゃな、と慶志郎の陰茎は根元で縛られ戯れに先端を玩ばれる。 何回イッたかなんて、分からない。 金剛は慶志郎の中で2回達した。 体のイイ処をどこもかしこも玩ばれ嬲られ、啼いて喘いで虚ろな目でぐったりと宙を見る慶志郎を抱き起こし、胡座を掻いて対面で抱え上げる。 ドロ、と中に放たれた精液が零れてくるのも構わず、未だ硬さを保った陰茎を尻に当て狙いを定める。 これだけ男を咥え込んでも、まだ恥ずかしげにヒクついて窄まり拒む其処が壮絶に厭らしい。 「……ァ、ァ、いや、だ……」 「悪いが、俺ァまだ満足してねえんでな。もちっと付き合えや」 「ひぐっ、あ、あっ、あああッッ」 ずぶ、と尻が落とされ自重で太い陰茎を飲み込まされた。 根元まで深く突き刺さる剛直が前立腺を抉り、縛られた陰茎がビクビクと震えた。仰け反る体をがっちりとホールドして、奥の奥まで突き込む。 ビクビクと痙攣する腸壁が搾り取ろうとするが如く、蠢いて金剛を貪欲に食い締める。嫌だと言う慶志郎の意思とは裏腹に、体は素直に快楽を享受する。 「うァ、あ、あ、あ、ッ」 「アンタの中、熱くて気持ち悦い」 ほら、と繋がったまま下から腰を回され、中でドクドクと脈打つモノがはっきりと分かる。小刻みに揺すられ、ソレが動いて内壁の一番イイ処をノックする。力が入らず後ろに倒れそうになる慶志郎を金剛は己に凭れさせた。 「手はここな」 腕を金剛の背に回すよう促される。 男の肩口に頭を乗せ、慶志郎は静かにぱたぱたと涙を流した。 抗い続けた慶志郎の精神はとっくに限界を越えて振り切っていた。金剛が悪戯に熱い吐息を耳に吹き込み、耳朶を食んで穴に舌を差し入れてくる。 ぬちぬちと耳穴を犯され、堪らない快感に啜り泣いた。 もう限界だ……金剛の肌に触れた手がよろよろと、大きな背中を抱き締める。 (気持ち悦い) もう無理だ……弱々しい動きで慶志郎は泣きながら自分を責め犯す男の腰に、両足を絡めて縋りついた。 (気持ち悦い) 力強く暖かい手が慰めるように、慶志郎の背を頭を撫でて「気持ち悦いか?」と訊いてくる。 「……き、もち、いい……」 言葉にした瞬間、慶志郎の脳内はそれで埋め尽くされた。 脳が認めると身体が呼応する。 男を咥える入口が切なく、きゅんきゅんと締め付けるのが自分でも分かる。 悦い。凄く悦い。 犯されてるのに、気持ち悦い。 戒められた陰茎が解放される。 「おい、」 名を呼ばれて慶志郎は虚ろな目を男に合わせた。 「頑張ったな、いい子」 「う、あ……」 「もう好きなだけイッていいぜ」 慶志郎。 初めて、男がその名を呼んだ。 同時に押し倒され腰を掴まれ、男も達する為に激しい律動を再開した。 肉と肉のぶつかる音が響く。 ぐちぐちと陰茎を扱かれる。 瞬く間に絶頂に駆け上がる。 イッてる最中も後も構わず、収縮する中を熱いモノが無理矢理割り開きイクのが止まらない。 慶志郎の陰茎はすでに何も吐き出していなかったが、尿道口を抉じ開けるように指が抉ると腰が浮いてガクガクと突っ張る。 イイ、もっと、と矯声を上げて啼く慶志郎の耳元で息を荒げながら、男が繰り返し囁く。 忘れんな、お前を犯してるコレの味を。 俺の形も熱も、ココに刻み込め。 俺でしかイケねえようにしてやるから。 慶志郎が一つ一つに頷くまで、それは繰り返された。 「アッああぁっ、も、む、り……ッ」 「っ、ぐ、……!」 一番奥まで突き挿れ、金剛は慶志郎の中に遠慮なく放った。 蕩ける程に彼の中は悦かった。 金剛によってイカされた慶志郎は、絶頂の余韻で体をビクビクと跳ねさせている。 今までのどんな人間よりも、慶志郎が一番いい。 力を失った陰茎を引き抜き、金剛はベッドから降りるとテーブルに放っておいたスマホを手に取り。 起動していた録音アプリを停止させた。 鏡 慶志郎に、逃げ場など与えてやるつもりは微塵もない。 出張二日目の夜はこうして更けた。 NEXT→
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