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14 ちょっと流されやすいだけ
「ん、は……、っ」
息を切らして、互いに唇を離す。お互い、もう興奮して、ふくらみがスラックスの上からも解るほどだった。キスだけでこうなってしまうのは、この先の快楽を知っているからだ。北斗の与える快感に、酔っている。
(結局のとこ、相性が良いんだよな……)
「その気になったじゃん」
「うるさい」
「んじゃ、鏡前行こ。イってる時の顔、見たいだろ?」
「っ、このっ……、性悪ホストっ! なんでそんな変態プレイ――」
腕を掴まれ、鏡前に突き出される。鏡の中の自分と目が合った。
真っ赤だ。アラサー男が真っ赤になっても可愛くない。鏡越しに見る北斗は、酷く満足げだ。
「お前、前から思ってたけど、Sだよなぁ……」
「僕は前からアキラがMだと思ってるよ?」
「……」
反論できなかったのは、過去に付き合っていた風俗嬢にも同じことを言われたからだ。彼女はSM系の風俗サロンで、女王様をやっていた。ちなみにSMプレイはしたことがない。
「Mじゃない。ちょっと……流されやすいだけだ」
「それマジ良くないからね」
北斗がそう言って、俺の肩からシャツを脱がせて行く。鏡前で脱がされるのは、何故だか背徳感があった。
「僕以外のひとに、流されないでよ?」
「どういう意味だ」
「別に」
そもそも、お前しかこんなことしないだろ。そう言いたかったが、その間にすべて脱がされてしまうと、言葉につまった。北斗の手が、鏡の中の俺に見せつけるように腹を撫でる。
「ここ、僕ので満たされんの、好きでしょ。アキラ」
「っ……、馬鹿言え……」
「アキラは知らないでしょ。僕の咥えてる時、すっごい切なそうにヒクヒクしてんだよ?」
腹をつつ、と撫でながら、ゆっくりと指が下へと降りていく。なぞられる感触と、視線の誘導。羞恥心を煽るしぐさに、ハァと息を吐いた。北斗は俺の反応が楽しいのか、嬉しそうに笑っている。
「お前、だって……」
「ん?」
項にキスをしながら、北斗が視線を向けた。鏡の中の北斗と目が合う。
「セックスしてる時、悪い顔、してんの知らないだろ……」
「ふはっ!」
珍しく笑い声をあげた北斗に、ドキリとした。
(っ……クソ。不覚にも、可愛いと思ってしまった……)
いつも人を食ったような態度で、可愛げがない北斗だけれど、笑った顔は魅力的だった。こんな風に笑う男なのだと、初めて気がついたような気がする。
「そんな、悪い顔してる?」
「……してるよ」
「ふふ、アキラの反応が良いから」
耳を嚙みながら北斗の手が胸をまさぐる。敏感な突起には触れず、皮膚を撫でる感触に、甘い痺れが湧いた。
ハアと息を吐きながら、鏡に映る北斗を見る。俺に愛撫するのに夢中で、視線は絡まない。この、『悪い顔』が嫌いじゃないと言ったら、どんな反応をされるだろうか。
指が、胸の先端を弾いた。
「んっ……」
「こうやって弾くのが好き? それとも、摘まむ方が良い?」
「ばっ……」
先端を摘まんで、こりこりと刺激される。胸を指でつままれ、感じている姿を見るのは、酷く滑稽だ。北斗のせいで敏感になった乳首は、赤く充血していやらしく見える。
「ぅ、んっ……、ひっぱる、なっ……」
「舐めてあげんのも良いけど、鏡が見えなくなるから、我慢して」
「あっ♥」
俺が舐めて欲しいみたいに言うな。否定したいのに、クニクニと両方の手で弄くられ、声が出なくなる。代わりに出てくるのは荒い息と、小さな呻きだけだ。
「ん、うっ……、ん」
「やらしい身体。気持ち良い、アキラ」
「あっ、あ、お前、がっ……」
「うん。僕のせいだよね」
首筋に痕を付けながら、北斗が笑う。
「ん、痕……」
「うん。マーキングしとく」
そうじゃない。
「馬鹿っ……、つけるなっ…、んっ♥」
北斗の指が、今度はアナルに伸びた。入り口を撫でるようにして擽られ、ビクンと身体が跳ねる。
「ここ、どんな風に咥えてるのか、見たいでしょ」
「馬鹿かお前……っ」
見たいわけないだろ。そんなもの見たら、萎えるに決まってる。
俺の意見を聞くつもりがない男なので、何を言っても無駄なのだが。北斗は今日は、鏡を使ったプレイを思う存分、楽しむつもりのようだ。
俺の方は、自身が年下の男に犯されてるのを見なきゃいけないわけで、精神的にキツイ。
(今さら羞恥心なんか、ないと思ってたのに……っ)
過剰に反応したら、北斗が気に入ってしまうかもしれない。それは阻止せねばならない。耐えだ。
なんの決意表明か知らないが、心のなかでそう思う。
その間に、ベッドの方へと誘われる。北斗に背中から抱えられるように抱きしめられ、嫌な予感に首を捻って北斗を見る。
嬉しそうな顔をするな。
北斗が予想通り、俺の脚を後ろから抱える。無理やり開かされ、見せつけられる。
鏡の中には、M字開脚状態の俺が、真っ赤な顔で映っていた。
「っ、北斗っ……!」
「ちょー、良いながめじゃん」
『ちょー』とか言うな。腹立つ。
北斗の指が、さわさわとアナルを撫でる。指先がヒダを引っ掻き、会陰を爪でなぞっていく。
「う、んっ……♥ あっ……」
「ここ、入ってるトコ、見たことないだろ?」
「くっ……、ん」
いつの間に濡らしたのか、北斗の指はローションで濡れていた。つぷん、指先が穴に入ってくる。
「――あっ♥」
ビクン、肩が揺れる。慣れた感覚のはずなのに、いつもより敏感になっている。北斗が指を出し入れするのを、凝視してしまう。
(うわ……、入って……る)
解ってはいたのに、視覚のせいで余計に感じてしまう。ふと、鏡の中の自分が、酷く浅ましい顔をしていて、ぐっと息を詰まらせた。
(え。なに。俺いつも、あんな顔してんの……?)
浅ましく、物欲しそうに。快楽に浸りきった顔をして。
「っ、あっ♥ あ、北、斗……っ♥」
グチュグチュと音を立て、抜き差しを繰り返す。指を素早く動かしたり、ゆっくり中を掻き回したり、奥をグリグリと虐められたり、緩急をつけて動かされる。
「ふっ、ん♥ んっ♥」
「エロい顔……」
ビクビクと膝を揺らす。俺の性器ははち切れそうなほど勃起して、先端から粘液を溢している。背中にあたる北斗も、同じだ。
「北斗っ……、入れ、て……」
「欲しくなっちゃったの? アキラ」
「う、るさい……、早くっ……」
ハァと息を吐いて、北斗を睨む。指じゃ、良いところに届かない。もっと、硬いもので貫かれたい。
相変わらずの馬鹿力で、北斗は俺を持ち上げると、自身の上に座らせた。
「―――っ♥」
ビクン、身体が跳ねる。
奥まで一気に貫かれ、視界が白くなった。
「あ♥ あ……♥ 北斗っ♥ おくっ……♥」
「ちゃんと見て、アキラ」
「あ♥」
脚を開かされ、突き刺さっている部分を見せつけられる。太く、長い北斗の肉棒を咥え込んで、穴がひくひくと震えていた。
本来、受け入れる場所じゃないはずなのに、俺のアナルは北斗のを根本まで呑み込んでしまっている。みちみちと肉輪は拡がり、赤く充血している。
「――っ♥」
「全部、入ってるだろ?」
耳許に、北斗が囁く。
体重が乗っているせいで、奥まで入り込んでいる。結腸まで挿入され、思考がぐちゃぐちゃになるほどの快感が襲ってくる。
「ふぅ♥ う♥ んぅ♥」
呼吸する度に腹筋が動いて、息をすることさえ、快感になる。気が狂いそうな快楽と、視覚の暴力に、語彙力などとっくに死んでいた。
「動くよ、アキラ……っ」
宣言と同時に、北斗がぐっと腰を掴んできた。下から突き上げられたかと思えば、一気に抜かれる。また、奥まで貫かれる。
ベッドのスプリングを利用して、弾むように上下運動を繰り返される。ぐぽっ、ぐぽっと、突き刺される度に内部が犯されていく。
「ひ、んっ♥ う♥ うぁ♥」
口から自然と、喘ぎが漏れる。北斗にしか与えられない快感で、脳が満たされる。
「北、斗っ♥ ほく、と♥」
名前を呼ぶ度に、北斗が嬉しそうな顔をする。何度も腰を打ち付けられ、触れてもいないのに俺の性器は精液を撒き散らしていた。
「あ――♥ あ、あっ♥」
「イっちゃった? アキラ」
「イったっ♥ イった、ナカ、擦んなっ♥」
「ムリ言わないで……」
どちゅん♥ 一際大きく突かれ、ビクビクと身体が痙攣した。
「~~~~~~っ♥」
どぴゅっと、北斗が弾ける。腸内でそれを受け止めながら、興奮で身体が震えた。
「あ、あ……♥」
ぐったりと、背中を北斗に預ける。鏡の中で、恍惚とした表情で息を切らせる、自分と目があった。
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