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第2話 まさかの論外!?
「いやー、まさか、悪魔が死神と人間を見間違えるなんてね」
「うるっせ! 人間に擬態してる死神なんて分かるかっつの!」
騒がしい声が聞こえる。まだ重たい瞼をなんとか開けてみれば、そこには白い天井があった。
「ここ、どこ?」
そばにいた二人が私の声を聞いてこちらを向いたのが見えた。
「やあ、起きたようだね。君、自分の番号言える?」
白衣を着た男がこちらに尋ねてくる。番号とは、なんだったっけ。自分の記憶をゆっくりと遡る。
(ああ、そうだった)
「番号193540です」
「うん。覚えているようだね。人間に擬態していたって事は、君は死神見習いかな?」
「はい」
私、山田祥平、もといーーー番号193540は死神を目指す見習いだった。あまりに人間に擬態しすぎていてその事実をすっかり忘れていた。……と、そこである事を思い出す。
「試験! 試験結果はどうなりましたか!?」
「あ〜……その事なんだけどね」
白衣の先生が言いづらそうに目を泳がせる。目線の先を辿れば、隣には胡散臭そうな見た目の悪魔が立っていた。
(どうして悪魔がここにいるんだ?)
「人間に擬態は出来ていたのだけれどね、死にそうになった所を悪魔と契約して助けられるのは論外だそうだ」
「……は?」
よく分からない言葉が聞こえた。何度か先生の言葉を頭の中で繰り返す。
(悪魔と……契約?)
訳がわからないという顔を先生に向ければ、スッと先生は隣にいる悪魔へと指を向ける。
つまり、私が、この悪魔と……。
「はああぁぁぁぁぁ!?」
「まあまあ、落ち着きなって見習いくん」
「これが落ち着いていられるかっ!」
慰めるかのように肩に置かれた手を振り払う。私は人間の体になっていた際、その死に際、この悪魔と契約してしまったのだ!
「おかげで死神採用試験に落ちてるんだぞ!」
「悪いと思ってるよ。でも、あのまま殺されててもやっぱり落ちてたと思うよ?」
悪魔の言葉に思わずグッと喉を詰まらせる。それはその通りだ。死神試験の最終試験は人間に死神だと気付かれずにごく普通の人間の一生を当たり前に終える事。途中で殺されたりしてはいけないのだ。
「……でも! 論外って……!」
じわりと目尻が熱くなる。涙を拭おうと右手を上げれば、手の甲に刻印された契約の印が目に入る。
「俺はもう……っこの先永遠に立派な死神にはなれないんだっ!」
「あーあー、泣くなって」
めんどくさいと言いたげなため息が上から聞こえる。
「大体! 私はお前と契約した覚えなんてないぞ!」
キッと悪魔を睨みつける。
「契約はちゃんとしたよ? お前の血と、了承の言葉はちゃんともらったからね?」
気絶する直前、この悪魔の声がしたのは覚えている。しかし、それを了承したつもりはない。
「えー? まさか、覚えてないの? はっきり言ったよ? 『どうとでもしろ』って」
「それは了承の言葉じゃない!」
思わず反射的に否定の言葉を叫ぶ。あの時確かにそう思ったが、口に出ていたのか。しかもこいつはそれを了承の言葉だと思ったようだ。
「……最悪だ」
「まあまあ! これからよろしくっ!」
私は差し出された手を強く叩いた。
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