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第2話

それからの俺はとても単純で、同じ事務所に所属する為に自分に出来ることをした。 清く、正しく。 文武両道。 そんなのは当たり前だ。 推しも通った道なんだから。 所属出来ることが決まってからも、学業も仕事も、どちらも手を抜かず、それまで以上を目指した。 はじめてのダンス練習だって最後まで居残りをして覚えた。 それこそ血の滲むような日々だった。 靴擦れで本当に血が滲んでも関係ない。 歌う時の声の出し方から、歌って踊ってもバテない体力づくり。 空間を盛り上げる方法。 自分の見た目にも気を遣った。 先輩達から学び、自らも学び、毎日が忙しい。 自分達を好きだと言ってくれる人達に笑顔になってもらいたい。 笑顔をもっと見たい。 あの“キラキラ”に魅了された俺は強い。 1人、悔し涙を流す日もあった。 悔しくて悔しくてたまらなくて、絶望することだってあった。 沢山、沢山。 何回も。 それでも、諦めなかった。 いや、諦めきれなかったんだ。 俺自身が。 だから、頑張ることは当然だ。 痛くたって手を伸ばした。 直向きに向き合っていく内に中学生だった俺は、大学生になっていた。 月日が過ぎるのは早い。 だけど、ただ過ぎていっただけではない。 いつしか俺はアイドルとしてステージに立っていた。 眩しいスポットライトを浴び、デビューおめでとうの声に包まれる。 メンバーと抱き合い、あぁ、デビュー出来るんだと思ったら涙がとまらなかった。 憧れていたアイドル。 誰かをキラキラさせることの出来る職業。 俺の夢。 いつからか、推しに憧れて入った世界での目標がかわっていた。 “自分の為”ではなく“みんなへ届けたい”へ。 照れくさいけど、本当の気持ちだ。 努力が報われたんじゃない。 みんなが輝かせてくれている泥臭い現実。 たまたま選ばれただけかもしれない。 運が良かっただけかもしれない。 それでも、事実だ。 やっと応援を返せる番だ。 沢山の声援やあたたかい言葉をファンのみんなに返せる。 こんなにも沢山の人をしあわせにしたいと心のそこから思っている。 俺はアイドルなんだ。

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