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第19話 僕の恋人
結局それから甘く絡め取られた僕は、茂人さんに服を剥ぎ取られて、お互いの熱を放った。昨日初めてだったその行為にはまだ慣れなかったけれど、茂人さんのリードが良いのか、僕は恥ずかしさを超えて夢中になってしまった。
そんな僕をうっそりと見つめる茂人さんの眼差しが怖いようで、僕はゾクゾクしてしまう。求められるって嬉しいけど、一方ですごく怖い。自分が丸裸にされた様な心細ささえ感じてしまう。そんな僕を熱い身体で組み伏せる茂人さんに、僕は必死に縋りついていた。
気怠い汗ばんだ身体を横たえながら、僕は閉じた瞼をそっと指先でなぞられた。
「楓君て、まつ毛長いね。顔も小さいし。こんな可愛いのに、今まで誰にもちょっかい掛けられなかったの?」
僕は目を閉じながら、口元を緩ませた。
「僕って、大人しいタイプだったから。女の子は面白い男子が好きでしょ。」
すると茂人さんは呟いた。
「…男から好かれるタイプだと思うけどな。楓君は粉かけられても気づかないか。良かった、楓君が初心で。」
僕は目をパチリと開けて口を尖らせて言った。
「僕のモテない談義はもういいです。…さっきも最後までしなかったですよね。それって…。」
すると茂人さんはにっこり微笑んで言った。
「ふふ。最後までしたかった?楓君が勘違いする前に言うけど、男同士は色々必要なものがあるんだけど、この部屋には無いからね。それよりそんなに進めても楓君大丈夫…?」
大丈夫?僕は茂人さんに聞かれて、戸惑ったけれど、茂人さんと結ばれたい気持ちは正直あった。僕は顔が熱くなるのを感じながら茂人さんを見つめて言った。
「…分からないけど、茂人さんと結ばれたい、です。」
すると、茂人さんは急に目をぎらつかせて、僕に噛み付く様にキスしてから、囁いた。
「ウブって凄い。攻撃力120%。」
僕は身体に触れる茂人さんの一部がまた硬くなって来たのを感じて、慌てて言った。
「茂人さん!出掛けるって言いましたよね!?」
流石に僕は腰が気怠くて、キスだけで我慢してもらったけれど、もしかして茂人さんは絶倫てやつなんだろうか。後から、機嫌良くシャワーを浴びて来た茂人さんを僕は思わずじっと見つめた。
「楓君のえっち。そんな目つきで見ないでっ!」
僕はクスクス笑って、茂人さんに新しいバスタオルを渡して言った。
「ふふ。僕、茂人さんの身体カッコ良くて好きです。羨ましいです。」
するとバスタオルごと引き寄せられて、僕を甘やかに見つめて言った。
「楓君は、本当煽ってくるよね。その無邪気な感じが、俺をどれだけムラムラさせるか本当教えてあげたいよ。今日は勘弁してあげるけどね?その時は覚悟して。」
最後の声のトーンはゾクゾクさせられる響きがあって、思わず甘いため息をついた。そんな僕を困った様に見つめた茂人さんは、僕の額に唇を押し当てて言った。
「約束通り出掛けようか。俺もキリがないから。」
そう言うと、僕を急き立てた。
それから僕たちは雑貨屋でお互いの家に置くためのそれぞれの専用カップを買ったり、洋服屋を冷やかしたりと楽しい時間を過ごした。それはレンタル彼氏の時のデートみたいだったけれど、その時とは全然違う部分があった。
不意に見せる僕を見つめる茂人さんの眼差しが、ゾクゾクする様に熱かったし、きっと僕もそんな目で茂人さんを見つめているんだろう。両思いになった恋人だけが交わすことのできる通じ合う眼差しを、僕はドキドキしながら実感していた。
夕食を一緒に食べたお洒落な居酒屋で、茂人さんが周囲の賑やかな喧騒に負けじと僕の耳元で囁いた。
『このまま連れ帰りたい。今度、連れ帰って良い?』
僕は一気に熱くなって、ニンマリしている茂人さんを睨みつけながら、耳を手で押さえた。
「不意打ちじゃないですか。」
すると茂人さんは、目の前のビールを飲み干して言った。
「マジでそうしないうちに帰った方が良さそう。明日一限あるって言ったよね。」
駅の改札を手を振りながら消えていく茂人さんを見送りながら、僕はドキドキしながら、思わずニヤける自分の顔を自覚していた。ああ、もう急展開過ぎて、現実感がない。
昨日は茂人さんに軽く遊ばれてるのかもって胸が痛かったはずなのに、今はすっかり愛情を受けて心がプルプルしてる。思い出してもドキドキする様な睦み合いは、身体を熱くして、僕は慌てて家に向かって歩き出した。
マンションの鍵を開けて扉を開けると、茂人さんの香水の匂いが僅かに感じられて、僕は思わず息を吸い込んだ。…良い匂い。大好きな人の匂いが感じられるなんて、恋人の特権なのかなと僕は思わず声を出して笑ってしまった。
ああ、僕、恋に浮かれたヤバい人みたいだ。ふふ。茂人さん大好き。
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