21 / 27
第21話 ため息と甘さと※
僕は焼け付く様な快感に溺れていた。茂人さんが僕の様子をじっと見つめている。その恥ずかしさが、同時にゾクゾクする様な欲望に変わるのが分かる。
グチグチと鳴るジェルの音が部屋に響いて、自分でも聞いたことのない甘い声と共鳴する様だった。茂人さんの指はもはや何本かも分からなくて、すっかり息も絶え絶えだった。
そんな僕の耳元で、茂人さんが甘える様に囁いた。
「…試してみる?無理だったら止めるから。大丈夫そう?」
僕は顔を向けて、茂人さんの唇に自分の唇を触れさせながら言った。
「…絶対やめないで。大丈夫だから。」
そう言う僕を困った様に見つめた茂人さんは、ゴクリと喉を鳴らして僕をうつ伏せにすると両手で僕の腰を掴んだ。重量のある茂人さんのそれが僕の腿や、際どい場所に触れると、その度にビクッと震えた。
さっきまでぐちゃぐちゃにされた場所にそれがピタリと狙いを定められると、僕は思わず泣きたい気持ちになった。
それはいよいよ結ばれることに喜びを感じたのか、それともこれから人生の全てが変わってしまうことへの決別の気持ちがそう感じさせたのか、理由ははっきりしなかった。
ぐっと沈み込んできた、指とは明らかに違う茂人さんのふとましい自身に犯されて、僕は止めていた息を吐いた。途端に深く沈み込んだ場所は僕を震えさせた。
あぁ、そこを…。すっかり貪欲になった僕は無意識に呟いて身体を揺らしていたみたいだ。不意に腰を掴まれて、グチグチと容赦なく突き擦り込まれて、僕は痺れる様な快感にはしたなく声を上げ続けた。
僕は受け入れることだけを考えていたから、その結果がこんなになるとか分かってなかった。終わりのない快感は気持ち良さの一方、苦しみと裏表だとか、出したいのに出せないそのじれつく思いとか。
茂人さんが切れ切れに僕の名前を呼ぶのが、胸を締め付ける様で、ただ幸せを感じた。でもそんな余裕は一瞬で、放り出されてしまった。覆い被さった茂人さんの手が伸びて僕自身に触れてしごかれると、直ぐに絶頂へのカウントダウンが始まった。
苦しげに呻きながらも、茂人さんが僕を揺らす手は止まることがなくて、僕はゆるゆると突かれながら、無茶苦茶に扱かれて真っ白になってしまった。途端にグリっと押し付けられた茂人さんの腰が馬鹿みたいに何度も打ちつけられて、僕は揺さぶられた先で、茂人さんの飛沫をズルリと抜かれた入り口で感じた。
ヌチヌチと擦り付けられるヌルついたそれは腿にダラリと垂れて来て、僕はドサリとベッドに支えきれない身体を突っ伏した。ああ、僕たちは最後の一線を越えた。それは甘くて、甘過ぎて、何処か受け止めきれない感情を連れて来た。
温かなタオルで身体を拭われて初めて、茂人さんが側にいなかったことに気づいた。疲れ切って一瞬眠っていたのかもしれない。幼子の様に身体を丁寧に拭かれると、僕はもっと甘えたくなって手を伸ばした。
クスッと嬉しげに微笑んだ茂人さんが、僕に覆い被さってベッドに戻ってきた。
「…楓、大丈夫?」
文字通り甘やかす様に逞しい腕の中に抱き込まれて、僕は胸いっぱいの幸福を感じた。さっきまで感じていたはずの物悲しさはもう思い出せなかった。
「大丈夫。少し違和感はあるけど、痛くなかったから。」
茂人さんは自分の首の凹みに僕の顔を押し当てて囁いた。
「俺、凄い気持ち良かったよ。正直、楓に病みつきになりそうなんだけど。楓って匂いも何か甘いし、肌も俺の手のひらにぴったりするって言うか。多分、身体の相性凄い良いんだ。初めてなのに楓もあんなに気持ち良さそうで嬉しかった。」
そう言われてしまうと、妙に気恥ずかしくなってしまって、照れ隠しに僕は口を尖らせて言った。
「…だって、茂人さん上手だから。僕みたいな初心者は手のひらで転がされちゃう。」
そんな僕は茂人さんに貪られてしまった。ひとしきり甘い口づけにうっとりさせられた後は、茂人さんがニヤリと笑ってボンヤリとした僕を見つめて言った。
「初心者の割に俺を翻弄するよね、楓は。楓は自信持って良いよ。俺、もう楓しか見えないから。」
そうふざけて言っていたはずなのに、最後は熱い眼差し文字通り見つめられていた。茂人さんは苦笑すると、ゆっくり起き上がって一緒にシャワーを浴びようと誘ってきた。
「一応痛くは無くても、塗り薬は塗った方が良いと思うんだ。用意してあるから、シャワー浴びたら塗ってあげるよ。そしたら違和感?も早く無くなるんじゃないかな。」
ちょっと赤裸々な下事情を言われて怯んだ僕だったけれど、考えようによっては僕の身体の事を考えてくれているんだと思って、僕は茂人さんに大事にされてるんだと実感してしまった。
でも塗られる時に、乱れる時とは別の意味で羞恥心に襲われたけど…。
ともだちにシェアしよう!

