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「松下」
書類に目を通していた様子の秘書に声を掛けた。
「どうされましたか」
「お前がもし、相手に隠し事があって、だがどうしてもそれを知りたい時、どうする」
「姫宮様のことで、何か気になることがございました?」
喉が動く。
御月堂自身よりも知り尽くしているらしい松下に言い当てられてしまった。
とはいえ、仕事中に仕事とは関係ない話で、それに仕事関係ではない相手の話をしているとなると、おおよそ察しがついてしまうだろう。
「⋯⋯まぁ、そんなところだ」
「いつも以上に真面目な顔をして、何を考えなさっているのかと思えば。仕事を集中できないほど気になるものなんですね」
「⋯⋯いや、そういうわけでは⋯⋯」
「いえいえ、いいんですよ。私も妻と子どものことで気になることがあって、仕事に手がつかないことがありますので」
こないだ松下に書類を渡す際、距離を間違えたのか掴み損ねたり、持ち歩いているバインダーをことあるごとに落としたりしていた。
疲れているのかとさほど気にもしてなかったが、あれは家族のことで気がかりなことがあったのか。
「それにしても、そうですか。姫宮様が秘密になされたいことですか。⋯⋯そうですね⋯⋯」
独り言のように呟いた松下が考えるような仕草をした後、こう言った。
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