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まだ話している松下のことを蚊帳の外に、御月堂はその秘書から言われたもっともらしい言葉を頭の中で咀嚼した。 相手が話してくれるまで、気長に待つ。 そうするべきだ。今は本人が言う気がなくても、あの時──痛ましいことをあの口から話してくれるまで。 しかし、たとえこれから先言うことがなくても、きっと気にすることはないだろう。 人には誰しも秘密があるものだ。 人に知られたくないものはずっと隠したいものだ。 それは自分も例外ではない。 自分の場合、口にせずとも他の手段で知られてしまう可能性が充分にあるわけだが、目にしてあまり気分がいいものではない。 自分としても出来ることならば忘れたい出来事であるものを、繊細で優しい心を持った愛賀には特に知られたくはない。 「⋯⋯どうしたものか」 「どうされました?」 「いや⋯⋯。⋯⋯それよりも松下。そんなにも子どもの行事に参加したいならば、いつでも休んでもらっても構わない。お前の代わりの秘書を寄越してくれれば」 「それはありがたいご提案ですね。ですが、社長。私と同じくらいの能力を求めてないで頂けますと、ありがたく存じます」 「私がお前と同じくらいの能力を持つ秘書を求めたことがあったか?」 「はっきり申し上げますとそうですね。ですので、私がよっぽどの不都合がない限り、代わりの者に引き継ぎするのは現状を鑑みますと、難しい話かと」 そんな無理難題を押し付けただろうか。 そもそも松下以外の秘書と仕事をした覚えがない。 だから、松下と同程度の能力を求めないでくれと言われても比べようがない。 「社長、心当たりがないという顔をしてますね」 「ああ、正直に言えばそう、だな⋯⋯」 「先ほど申し上げたように、私が不都合があった際に代わりの者に引き継いでもらったことがあったのですが、書類の誤字脱字などのチェックし忘れ、社長に渡さなければならない大事なものを渡しそびれ、それがきっかけで取次ぎ先の関係が少々こじれてしまったり、治験の遅れが出てしまったりと、他にもありますが、そういったミスが目立ちまして。普段の業務にはそのようなことは見当たらない人達でしたのに」

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