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おかしな話です、と眉間に皺を寄せ、考える素振りを見せた。 誤字脱字程度は御月堂自身も見落としてしまうものだから仕方ない。が、自分達以外の関係のある大事なものであれば話は別だ。 松下に言われて思い出したのは、提供先の病院からの薬に関する資料を御月堂が目を通しておらず、その病院の必要な患者に行き届いていなかったというもの。 きちんとその話が行き届いてないと知ったのは、病院から薬が不足しているという旨を言われてからだった。 どうしてそのようなことになったのか、一つ一つ原因を探ってみると、その時の松下の代理としてしていた秘書が御月堂にその資料を渡してなかったからだと分かった。 「⋯⋯私が目を通すべき資料が遅れたせいで、病院に提供するはずだった薬が不足したことがあったな」 「そのようなことがあったと報告がありましたね。その大元の原因となった秘書はその日のうちに解雇しましたよね。『我が社だけでなく、提供先である病院までも信用に欠けることをした』という旨と共に」 「そうだ。それはあってならぬことだったからな。責任を持って解雇という形にした」 「ですが、全てが全て秘書の責任というわけではなかったそうですよ」 「なに?」 その話はそれで終わったはず。 他の原因があったとしたら、これからのために活かさなくてはならない。 促す目線を送ると、松下はこう言った。 「僭越ながら、社長。社長はコミュニケーションを取るのが非常に苦手ですよね。それが原因でその秘書は勘違いに勘違いを重ね、その結果が、資料を渡しそびれることとなったようです」 「⋯⋯」 御月堂は顎を擦り、思案した。 松下が言ったようにコミュニケーションが苦手という自覚はある。だが、普段松下とやり取りする時とさほど変わらないやり取りを、その秘書にもしたはずだ。 それで松下は滞りなくやってくれている。 本当に自分に原因があるのだろうか。

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