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第2話
次に目覚めた時、僕は見覚えのない変な部屋に転がっていた。
扉も窓もない。ただ中央にパイプむき出しのベッドがひとつあるだけだ。そして一番変だと思ったのは、壁一面に描かれた下手くそな絵だ。
(なんや……。この部屋……)
「おはよう」
そして、僕を見下ろすように立っていたのは、さっきの天使だ。
天使の身を包んでいるのは腰に巻いている布だけだ。透き通った肌を惜しみなく出しており、その背中にはやはり翼が生えていた。
「僕を助けてくれた天使か?」
「ミカエルだよ。よろしくね、筑摩映司くん」
名乗ってもいないのに僕の名を知っていることに奇妙さを感じたが、あえてそれを突っ込むことはしなかった。
「この変な部屋なんなん?」
僕の問いにミカエルは可笑しそうに口角を上げた。
「ここは下界でもない、天界でもない世界。かの有名な『セックスしないと出られない部屋』だよ。本当は真っ白な部屋だったんだけど、大人の事情で壁に絵が塗られたんだ」
「ちょっと待って。突っ込むところが多すぎてどこから聞けばいいか分からん」
「じゃあ、僕から質問をしてあげよう」
「なんでお前が質問するねん」
「この壁を見て、君は何を思った?」
「え……?」
そう言われてもう一度僕はその絵を眺めた。
まるでパソコンソフトで素人が慌てて作ったようなその絵は、雑な海と太陽が描かれている。その太陽の下には達筆な文字で『夏』と書かれており、この奇妙な絵をより引き立てていた。
僕はその絵に込められた隠されたメッセージを考えて見たが、よく分からない。
「別になんも。夏やなぁぐらいしか思わへんけど」
「そうだよね! 夏だよね! 誰がどう見ても夏だよね!」
「だって『夏』って書いてるやん」
ミカエルは嬉しそうに笑って僕の手を取った。そしてそのまま僕の手を引いて身を起こさせる。
「良かった。君にそう言ってもらえて。これで僕らは間違いなく『夏』っぽい場所にいる。……よし、じゃあセックスしよう」
ミカエルは僕の手首を掴むとベッドに向かって歩きはじめた。僕は素直に応じるわけもなく、座り込んだまま立ち上がるのを拒絶した。それでも強引にミカエルは僕を引きずっていく。
「待て待て待て! 意味が分からん」
「セックスしないと出られない部屋にいるって言ったじゃないか」
「なんやねん、その部屋! 人を訳の分からん部屋に閉じ込めよって!」
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