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第3話
ふと先ほど天使の腕の中で発した言葉を思い出した。
(それって、つまり僕は命が助かる上に童貞も捨てられるってこと? ……ラ、ラッキー!)
「言うた! もももしかして、ぼぼ僕のどどどど童貞を奪ってくれる可愛い女の子を用意してくれてるんか?」
興奮のあまりどもってしまった。僕は立ち上がって辺りを見回してみたがしかしそんな女性はどこにもいない。ミカエルが僕を見つめている。視線が合うと妖艶に微笑んだ。
「相手は僕だよ」
「え……、だって、ジブン……」
男やろ? と言いかけて、口をつぐんだ。
相手は人間ではなく天使だ。
性別なんてあってないものかもしれない。
なにごとも決めつけはよくない。
顔だけ見れば文句なしの美少女だ。
一人称も流行りのボクっ娘っていうやつかもしれないし、むき出しになっている平らな胸も、実は貧乳なだけかもしれない。
きっとその腰の布の下にはあの忌まわしい男性器は付いていないに違いない。なんか股の下に怪しい膨らみがあるけど、あれは布のシワになってるだけで、多分付いてない。うん、そうに決まっている。まさかこんな可愛い顔してチンコなんて付いてるはずが……。
「付いてるよ」
わずかな希望にすがろうとした僕をミカエルはあっさりと打ち砕く。必死に考えすぎて、天使の股間を凝視していたようだ。
「ですよねー。……って、男とセックスなんて出来るかーッ!」
僕が怒鳴った瞬間、天使は腕を振り払い、何かが頰をかすめた。
ガツンと音を立てて背後の壁に何かが刺さった。
振り返ると天使の羽根らしき物が、壁に深々と突き刺さっている。金色のオーラをまとった羽根はナイフのような硬さを保っているようだ。
「君に選択肢なんてあると思うのかい?」
ミカエルは自らの翼から、羽根を一本取ると小さな舌でそれを舐めた。
金色のオーラを放ったそれを、僕の顎の下を撫でた。そして天使は無情の瞳で僕を見下ろした。
「最初に言ったでしょ? ここはセックスしないと出られない部屋だって。拒否するなら、手足を切り落としてヤるだけだけど」
(し、四肢切断やと……!? 初体験から、超ハード展開やんけ!)
そんな彼の脅しに抗えられるはずもなく、僕は大人しく見た目だけは無垢な天使に従った。
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