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「初めての。」後編
※ハル視点です。
「……あの、昨日はすみません」
俺がインスタントのコーヒーをいれて、安いクロワッサンをトースターで温めていると背後からごにょごにょと声がした。夕くんだ。寝起きが悪い夕くんはいつも俺が出かけるまで寝ているので、俺はびびってコップを倒しそうになった。夕くんは存在感が薄いのだ。
「あ、おはよー。別にいいよ。昨日は焦ってごめんね」
夕くんは起きたてで顔も洗わず、寝ぐせのまま俺の前に立ってる。なんだかこういうところを平気で見せてくれる仲になったんだなあと思い、じーんとする。
「俺、夕くんのこと好きすぎてたまに我慢できなくなっちゃって…ごめん。ちゃんとストップかけてくれて助かるよ」
と言ったのはもちろん本心だったが、残念なのも本音だ。もう少しで一線越えられそうなのになかなか越えられなくて俺はいよいよ抑えが効かなくなってきた。
「あ、あの、やっぱり、その…手でするくらいなら大丈夫かも……」
!?
「口でされるのはちょっと抵抗があって」
夕くんは顔を赤くしながらもじもじというか、ぼそぼそと告げてきた。
「それでもいいですか?」
上目遣いでそんなことを言われたら、俺のスイッチは秒で入る。
「い、いいよ!!」
俺はまだ起きたてで布団のぬくもりが残っている夕くんを抱きしめた。そのまま腰や腿やお尻を触る。
「って、今ですか!?」
「まだバイト行くまで2時間弱あるもん」
本当は洗濯とか掃除とかもろもろ済ますつもりだったが、そんなの今やらなくても死なない。
「大丈夫!」
15分くらいでヤリ終えた事あるし!と勢いで言いそうになって慌てて口をつぐむ。
さっきまで寝ていた布団の上に再び戻ってくると俺は夕くんを座らせた。
「どうしてたらいいですか…?」
夕くんは正座をして不安そうに聞いてくるが、俺はもうなんでもいいから夕くんとなんかエッチなことがしたい!!という気持ちしかなかった。
「口使わなければ何してもいい?」
「どういうことですか!?」
夕くんは何を想像したのか今にも逃げ出しそうに腰を浮かしたので、俺は手を掴んで夕くんを捕まえておく。
「いや、そんなに変なことはしないよ…」
多分。
「怖いことしないから大丈夫」
できるだけ優しいトーンで、がっつかないようにがっつかないように…と心の中で繰り返しながら俺は夕くんにキスをした。
そのままゆっくりと夕くんを押し倒す。夕くんは戦々恐々として固まっていたが、抵抗はしなかった。シャツの中に手を突っ込んで上半身を撫で回しながら、夕くんの首筋にキスをした。意外と筋肉質の夕くんの体は首の筋から鎖骨までがよく浮き出ててエロい。
「ん、っ」
首を吸うと大きく身じろぎをする。夕くんから吐息と共に声が漏れる。
「首弱い?」
「くすぐったい…」
「そっかー」
夕くんは首が弱いのかもしれない。俺は面白くなって首筋を執拗に責めた。
「ちょ、ちょっと、もうそこやめて」
夕くんが足をばたつかせて抵抗し始めた。俺はそれを止めるように下着に手を突っ込んで夕くんの性器を優しく握った。
「あっ」
びくっと一瞬体をしならせて硬直すると、夕くんは大人しくなった。俺は夕くんに覆い被さりながらできるだけ優しく睾丸を優しくさすったり、陰茎に指を這わせた。
夕くんが俺の手で気持ちよくなってくれればいいなと思いながら。夕くんの呼吸が荒くなるにつれて俺も興奮が抑えきれなくなる。
狭い1Kの部屋には俺たちの吐く息の音とシーツと肌が擦れる音しか聞こえなくなっていった。朝の光が爽やかに俺たちを包むもんだから、より一層室内のいやらしさが際立つ気がした。
最初は縮こまってた夕くんのそこは俺が触れるたびに血液が送られて完全に勃っていた。ちなみに俺のも暴発寸前くらいになっていた。
夕くんは顔を見られるのが恥ずかしいのかそっぽを向いていたが、
「夕くんと一緒に気持ちよくなりたい」
と言うと、
「えぇ……?」
と困った顔を向けてきた。その顔がひどく可愛くてクラクラする。夕くんはとても知的な雰囲気だが、世間知らずであどけない。そのアンバランスな感じがとても好きだった。もっと、夕くんにいろんな顔をさせてみたい。恥ずかしそうにしている顔や困った顔。ああ、あとイクところがすごく見たい。
「一緒にいこうよ」
「どうやって……?」
「これしよ」
俺は自分の下着とズボンを脱いでしまうと、夕くんのと自分のを擦り合わせた。どっちからも透明な液体が垂れてしまいそうなほど滲んでいた。
「ま、待って」
夕くんは俺の二の腕をぎゅっと掴む。
「痛い?」
ふるふると首を振る。
「あっ……」
俺と夕くんのものを一緒に握ると夕くんが声を上げた。驚いたようにそこを見ている。擦り合わされたお互いの性器がめちゃくちゃエロい。俺は二人分のものを握りながら自分を夕くんに押し付けるように腰を動かした。
「気持ち良い?」
ずっと困り果てた顔をしていた夕くんの顔はやっと蕩けたように目を細める。
「う、うん…」
手の汗とさっきから俺たちを濡らし続けている透明な液体が潤滑油みたいになってそこは快感を生み出す。初めて得る夕くんとの快感に俺も頭が沸騰しそうになる。
「夕くん可愛い、めっちゃ可愛い、すきだよ」
俺は紅潮していく夕くんの頬を見ながら、めちゃくちゃ興奮していた。汗をかいているのか夕くんの匂いが立ち昇ってくる。
「あっ、あぁ、」
夕くんは背中の方に手を回してきてぎゅっと服を掴む。
「ダメ…!でそう…でちゃう……っ」
夕くんは切羽つまった声を出す。
「いいよ、そのまま出しちゃって…」
「でも…」
「大丈夫だから。あとでちゃんと拭いてあげるから」
「ほら、俺もイキそ…」
最後はお互いの息遣いと性器を扱く音しか聞こえなかった。二人の息の音が高まって重なり合った後、二人分の精液が夕くんのお腹の上にかかった。
調子に乗った俺はクリスマス(本番)に向けて少しでも慣れてもらおうと、その後も夕くんが遊びに来るとエッチなことを致そうとしていたのだが、ある日、
「あの…こういう事って会ったら必ずするもんなんですか…」
と問われ、
「...えっ」
思わず手が止まってしまった。
会ったら必ずエッチな事をするなんてマナーでもルールでもないけど、会う=セックスだった俺は一瞬何かこう世界の真理を見たようなはたまた異世界を覗いたような変な気持ちになった。
「そ、それは人それぞれだと思うけど…」
「ひとそれぞれ…」
と夕くんは外国語を復唱するように言った。
「夕くんは嫌?」
「いや…嫌とかじゃなくて…そんなもんなのかなって…」
でも中学生のお付き合いじゃないんだから家にまで来て映画見てゲームして終わりって考えるのも少し幼稚な気がする。いや中学生だってもう少し進んでるかもしれない。ましてや俺たちは男同士だ。ダメな日とか気分が乗らない日なんて女の子より少ないんじゃないの…?
俺はかつて一度だけ女の子と付き合った経験をぼんやり思い出しながら夕くんとの付き合い方を考える。
「……」
夕くんは恥ずかしそうに俯いてしまった。そんな夕くんを見てるとまたムラムラしてくるが同時にピュアだなあ。と微笑ましい気持ちになる。
「ごめんね、じゃあ今日はエッチな事しないよ」
夕くんの顔があからさまにホッとした顔になる。困らせたくないし嫌な事したくないし嫌われたくない。このまま逃げられるなんて事ありえる。本当は初めてならセックスの気持ちよさを教え込んで俺から離れられなくしたいなあ…みたいな邪心があったが、夕くんにそれは通用しなさそうなので、一回切り替えよう。うんうん。
ゆっくりゆっくりでいい。夕くんが疲れない速度で関係を進めていきたい。できればこの子と一生一緒にいれますように。
(と、陽也は決意したのだが、結局クリスマスに再度迫って初めてのセックスに及んだ。しかし、うまくいかず、それ以降夕大はトラウマを重ねていくことになるのであった……。)
おわり
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