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第2話

「…ん……ん?」  薄く瞼を開くと、サイドからほんのりとライトが照る部屋の見知らぬ天井と目があった。 「…え!?」  瞼を開けた瞬間、何も覚えていない僕の体は本能で恐怖に溢れ、呼吸をすることを忘れ、息が詰まった。  僕はかけられていた布団をガバッと剥がすようにして起き上がる。 「あー起きた」 「…蓮…」  すぐに僕はホッと肩に入った力を抜き、深い呼吸をする。  蓮の部屋の匂いがした。 「はい蓮ですけどー」 「い、いや待って待ってなんで僕ここにいるの、どういうこと、どうなってんの」  僕が横になっていたベッドには、蓮がベッドに身を沈めていた。  当然ここは蓮の部屋であるし、当たり前である。  冷静になって考えてみれば、僕がここにいる理由、同じベッドで横になっている理由、状況が全く把握出来ない。  蓮はこちらを見ることなく、まるで当然かのような顔でスマホを見つめている。 「蓮の…部屋、だよね」 「そー。お前が店で酔ってグータラしてたせいで終電逃したから」 「え、酔ってた…?僕が…?全然覚えてない…い、色々ごめん」 「まあ覚えてないだろーな、だいぶ酔ってたし。で、とりあえずうちに連れてきた」  今の僕は酔いが覚めている。  なのに、ついさっきである数時間前のことはとても覚えていない。 「てか今電気消して暗いのによく俺ん家って分かったな、こえーんだけど」  以前から何回か蓮の一人暮らしの家にお邪魔したことはあるが、電気が消えた蓮の部屋にいるのは初めてだ。 「…蓮の匂いがしたから、すぐ分かった」 「お、お前…まだ言うの…?」  僕が口を開いた次の瞬間、突然、蓮の視線はスマホから僕へと移り変わる。  ここに来て、初めて目があった。 「…え?」 「…お前、そろそろキレるぞ」 「え、ごめん、何」 「…お前さ、マジでここ来るまでのこと、少しも覚えてねえの?」  蓮はこちらを向いては俺の方へ身を乗り出してきた。  蓮が体を動かしたことでベッドがギシッと音を立てた。  無意識に何を想像したのか、僕の胸はドクンと大きく音を立てた。 「お、ぼえてない…」 「あっそ」 「へ、変なこと言ってた…!?だったら、ごめん」 「もっとちゃんと謝れよ。俺がお前おぶってる時からお前ずっと変なこと言ってんだよ」 「…は…っ!?」  おぶってって…蓮が俺をおぶったってこと…?それにずっと変なこと言ってたって…おぶられながら…!?  突然明るみに出された事実に、僕の体は爪先から頭上まで一気に熱が上がってくる。  そんな僕を見た蓮はニヤリと笑った。 「覚えてねーならしょうがねえ、お前の失態一個ずつ暴露してやるよ」
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