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第3話

「陽斗の家より狭いけどごめんな。二回目だろ?うちに来るの?」 「うん。一回目は半年前、新が歓迎会で酔っぱらってしまってここに送ってきた。それ以来だよね」 「あのときは本当に悪かった。陽斗にも人様に迷惑を掛けるくらいなら今後一切酒を飲むなと怒られた。それで目が覚めて酒はたしなむ程度に飲むようになった」 前住んでいたアパートが住人の煙草の火の不始末で全焼してしまい、新は会社の近くのアパートに引っ越した。遊びに行きたくても陽斗がなぜか許してくれなかった。わざわざ行かなくても、呼べばいいだろうって。 「散らかっていてごめんな」 「ううん、大丈夫」 携帯が鳴った。出ようとしたら、 「出なくていい」 新が僕の携帯を持ち上げると電源をオフにして机の上に置いた。 「あんな酷いことを湊に言ったんだ。たまにはお灸を据えたほうがいい。風呂に入ってきたら?はい、着替え。バスタオルは置いてあるから」 真新しいパジャマと下着をぽんと渡された。 「ありがとう。でもなんで?」 「陽斗と一緒にいて息が詰まるだろ?湊が家出して、いつでも泊まりに来てもいいように準備しておいたんだ。湊が風呂に入っている間にシ―ツを交換しておくから俺のベットを使っていいよ」 「新はどこで寝るの?」 「そこら辺で寝るから気にするな。昨日ろくすっぽ寝てないんだろ?」 「新はなんでも分かるんだね」 「当たり前だろ?何年一緒にいるんだよ」 「十五年です。陽斗より半年長い付き合いです」 「そう、よくできました」 頭をぽんぽんと撫でられて、 「僕、子供じゃないよ」 手を振り払おうとしたら、 「中身は子供だろ?本当に湊って可愛いよな」 長い指先で髪をくしゃくしゃされた。 「ぐしゃぐしゃになるから止めて」 「髪、どうせ洗うんだろ?同じだろ?」 くすりと笑われた。

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