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第4話

お風呂から上がり、髪を乾かすのがめんどくさくなって。ベットにそのままゴロンと横になった。枕元に置いてあった電源の入っていない携帯に手を伸ばした。 亡くなった父は専従的に要人の警護の任務につく警察官だった。県警の警備警護担当者だった。 十五年前陽斗の父親、つまりコビヤマの社長、七海吉人さんが新工場の土地取引を巡り指定暴力団とトラブルをおこし命を狙われるようになった。誘拐されそうになった陽斗を父は身を挺して助けたけど、そのとき犯人に発砲され帰らぬ人になった。 父子家庭だった僕は児童養護施設に引き取られることになった。再婚した母親のもとには行きたくなかった。母親の再婚相手の男性をお父さんってどうしても呼ぶことができなかったから。 一時保護先の児童相談所に迎えてきてくれたのは新と新の父親だった。コビヤマの副社長の凱《がい》さんだ。凱さんは社長の弟だ。 半年間一緒に暮らして、その後、陽斗の家に引き取られた。 陽斗きっと心配しているよね。でも婚約者とデートしているかも知れないし。どうしよう、電源を入れるのが怖い。でも一言だけ、日曜日には帰るからってメッセージを送ったほうがいいよね。意を決し電源をいれたら、 「ドライヤー使うだろ?」 新が部屋に入ってきた。とっさに携帯を布団の中に隠した。 「隠してもバレバレだ。陽斗には連絡しておいた」 「怒っていたよね?」 「いや、そうでもなかった」 「本当に?」 「本当だ。頼むから疑いの目で見ないでくれ。明日明後日は仕事が忙しくて帰りが遅くなるからちょうど良かったって話していた」 陽斗は第一志望の大学には進学せず、調理師の専門学校に進学した。自分は経営者の器ではない。べつに跡取りは俺じゃなくても弟二人いるし、新もいるし。そう言って自分の意思を押し通した。
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