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第5話
「上げ膳に据え膳、ワイシャツもアイロンがけしてもらい、風呂上がりにはドライヤーをかけてもらって、毎日愛妻弁当。甘やかすのはいいが、このままいったら湊が一人立ち出来ない。それをアイツはどこまで分かっているんだが。湊、お前もだ。自分で出来ることは自分でしろ。陽斗に甘えてばかりいてはダメだ」
「それは分かっているんだけど、俺の楽しみを奪うのかって言われるし。あ、でも家事とご飯の用意はしてるよ。交代で」
「それが普通だ。湊、髪を乾かしてやるから起きれるか?」
「ドライヤーくらい自分で出来るから」
「今にも寝そうな顔をしているのにか?寝落ちしたら大変だ」
新にそう言われて体を起こし座り直した。
陽斗みたく新も指先で頭皮をマッサージしながら、ドライヤーをかけてくれた。温風が心地いい。だんだん眠くなってくる。
「絢斗《あやと》さんが今度家に遊びに来たらって言ってたよ。湊に手料理をご馳走したいんだって」
「絢斗さんが?」
「あぁ。父さんももれなくついてくるけどね。毎日会社で顔を合わせているから父さんと会いたくないから無理しなくていいよ」
絢斗さんは凱さんの伴侶で二人は同性婚をしている。大学生のときに交際をスタートさせて、今年で結婚二十五年。とても仲がいい。絵に描いたようなおしどり夫婦だ。
「行こうかな。絢斗さんに久し振りに会いたいし」
「分かった。連絡しておくよ」
「あ、でもその前に陽斗の許可をもらわないと」
「反対されるに決まってる。いい加減学べ。父さんに陽斗に連絡しておくように頼んでおく」
「うん、お願い」
「なぁ、湊……」
「何?」
「いや、なんでもない」
首を横に振る新。
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