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第6話
「え!?何?気になる」
「たいしたことじゃない」
「もしかして彼女が出来たとか?」
「出来ていない」
「えぇ~~嘘だ。モテモテなのに?」
「誰がモテモテだって」
いま新がどんな顔をしているのか気になって。ちらっと見ようとしたら、
「俺で遊ぶな」
タオルが頭にバサッと掛けられた。
「営業部に異動させられるかも知れない」
「営業部……」
寝耳に水だったから驚いた。
「新も知っているように僕は営業はに向かない。あがり症で緊張して全然喋れなくなるんだよ。今いる部署が一番性に合っている」
高校を卒業してコビヤマに就職して一年近く営業部にいたけど成績はいつも最下位。毎日上司に怒られていた。新の家に遊びに行ったとき凱さんに仕事を辞めたいと相談したら、生産管理部のなかにある経理課でちょうど寿退社した女子社員がいるからとすぐに異動させてくれた。
「僕を快く思っていない人がいるのは分かっているんだ。創業一家の出身でもないのに、副社長のお気に入りだか知らないがいい気になるな、孤児の癖に付け上がるな、お前の父親はわざと社長の息子を庇って死んだんじゃないのか。本当は犯人だったりして。そんなメールが来たことがあるから……」
「湊、それ初めて聞いたぞ」
「あ……」
凱さんに口外するなと言われていたんだ。しまった。つい、うっかり口を滑らせてしまった。気がついたときはすでに手遅れだった。
「ごめん。新に余計な心配を掛けたくなかったんだ。だって、新と会社で立ち話しをしているとき、まわりにいる女子社員におもいっきり睨まれるから」
「それとこれとは別だ。これからは父さんに相談する前に俺に相談して欲しい。他人行儀はなしだ。分かったか?」
うんと頷くと新が言葉を続けた。
「話しは戻すが、湊も知っているように営業部内で保管していた顧客情報や見積書などの機密データを外部に持ち出した人物がいる。その人が誰か調べてほしいらしい」
今の営業部の部長もあまりいい噂は聞かない。関わりたくないから誰も手を挙げる人がいない。ということだろう。
「もしその話しが人事から来たら断っていい」
「分かった」
おやすみと言い残しドライヤーを手に新が部屋を出て行った。
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